第十話「整形外科医の男」

いかにも温厚そうなその男性は、二人の女性の名前と生年月日を書いた。男性の名前は黒田翔平、三十二歳の整形外科医である。
彼は将来、父親の経営する病院を継ぐ身なのであるが、母親からそろそろ結婚しなさいと言われ、病院で働く看護師の中で好みのタイプ二人を選んできた。

「黒田さんのご両親の、お名前と生年月日を教えていただけませんか?」
「私の両親ですか?」

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「はい。結婚は当人たちだけの問題ではなく、必ず、親兄弟親戚がついてきます。特に黒田さんのお母さんとの相性というものが大事になるものですから」
「なるほど、そう言う事ですか。わかりました」

零美は五人の命式を出し、それぞれプリントアウトして彼の前に並べた。

「黒田さんはとても頭が良くて、理論的思考が得意な方ですね。一方では感受性が鋭いところがあり、人見知りするタイプのようですが」
「はい。その通りです。人間関係が苦手っていうか、特に初めて会う人なんかは、なかなか話しかけづらいです」

「お父さんと似ていますね、そういう所は」
「はい、父もそうです。父は婿養子ですから、母には頭が上がらない感じですね」

「なるほど。お母さんはかなり強い方ですもんね」
「はい。母は厳しい人なので、母が認めてくれる人じゃないと難しいかなと思うんです」

「そうですよね。本当は、こちらのお嬢さんたちの、ご両親やご兄弟までわかると、どのようなものを受け継いでいるとかがわかるんですけどね。
たとえば、離婚再婚を繰り返す家系だとか、男性が早死にする家系、女の子が続いて男の子が生まれないとかですね。

あと、病気なんかも遺伝的要素が強いですから、あらかじめ知っておくと良いのですが。また、黒田さんはご長男ですから跡取りが必要ですよね。元気な子どもを産んでくれる丈夫な女性というのも大事だと思うんです。

それで、ご本人たちだけでなく、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、兄弟姉妹、おじさんおばさんなどまで調べると、その家系の習慣性というものが見えてくるんですけど、それはなかなか聞けないですよね」
「はい、確かに…」

「まず、こちらのAさんですが、かなり自我が強い方です。綺麗な方だと思うのですが、ちょっと人を見下すところがあるかもですね。子どもの頃から『可愛い、可愛い』と言われてきたのではないですかねえ」
「確かに、この子は美人です。いつもニコニコしていて明るい子で、誰とでもすぐに仲良くなれるって感じです。頭の回転も速くて、割と人気者ですよ。負けん気が強くて、物怖じしないタイプで、思ったことをズバズバ言います。私としては、自分が人間関係が得意ではないので、こういう人がいいのかなと思ったりするのですが…」

恥ずかしそうに頭をかく黒田。零美は、彼が頭をかくたびにポロポロと落ちるフケが気になっていた。

「この人は、かなり潔癖症というか、綺麗好きではないでしょうか。完璧主義者とも言えますかね」
「あー、そうかも知れませんね。何事も完璧にこなしたいというか、努力家ですね」

「そしてこちらのBさんですが、ちょっとおっとりタイプに感じられますね。癒し系というか、あまり自己主張しない人のようです」
「そうですね。彼女はAさんより若いのですが、とても落ち着いているので、知らない人は彼女の方が年上に見えるかも知れません。人の話をじっくり聞いてくれるので、よく相談されるみたいですよ」

「Bさんは、外見は静かなのですが、内面はかなり強い意志を持っています。辛抱強いというか、やはりこの人も努力家だと思います。何となくですが、黒田さんはBさんに惹かれている気がするんですが……」

再びフケを飛ばしながら、恥ずかしそうにはにかむ黒田。

「実は…、美人なのはAさんなんですが、一緒にいて心が安らぐのはBさんなんです」
「ですよね。Aさんは確かに素晴らしい人なのですが、自分にも厳しく相手にも厳しい人です。医師という仕事はストレスが溜まる仕事ですから、家庭はストレス解消の場所であってほしいのですが、Aさんと一緒だと逆にストレスが増してしまいそうです。

黒田さんは一人の時間を大切にしたい方ですが、Aさんは賑やかな感じが好きですよね。黒田さんはインドア派なのに対し、Aさんはアウトドア派って感じです。休日の趣味なんかも一緒に楽しめる人の方が、長い人生を一緒に歩いていく上で重要だと思うんですね。

一方のBさんは文学少女って感じで、本を読んだり絵を描いたりするのが好きだと思います。どちらかというと受け身のタイプですかね。Aさんとは全く逆だと思います。

よく、夫婦は、お互いの不足している点を補い合う組み合わせが良いと言われますが、黒田さんのように悩みやすいタイプの人は、出来るだけ共感してくれる人が側にいてくれるといいんですね。
Aさんは『自分が正しい』と思っている人なので、なかなか弱い人に寄り添うのは難しいかなと思うんですね。その点、Bさんは共感力に優れているので、黒田さんにはBさんが合っていると思うんです。

さらには、黒田さんのお母さんが強い方なので、Aさんは反発してしまいそうなんです。まあ、お母さんとAさんはある面、とても似ているからですね。
Bさんなら、お母さんの言うことを『はいはい』と聞けると思うんです。お母さんのような人は、自分に従ってくれる人にはよくしてあげたいんですよ」

黒田はうんうんとうなずいていた。黒田の心は固まっているようだと零美は感じた。

「先生、わかりました。私もBさんが良いと思います。ていねいにどうもありがとうございました」

すっかり満足した黒田は、最後にコーヒーを飲み干して、鑑定料を払い帰っていった。
零美は、今日の仕事に満足していた。そして、黒田が幸せな家庭を築いてほしいと願っていた。

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