第13話「熟年婚活の女」

昼下がりに訪ねてきた中年の女性は、奥から覗いていた和彦が見ても色気のある、男好きのする女性だった。ニコニコとして、顔も体も全体的にふっくらとはしているが、若い頃は美人だったのではないかと和彦は推測していた。

「あの…先生、私今五十二歳なんですが、娘が小さい時に夫と離婚して、それ以来女手一つで育ててきて、もう娘も結婚して孫もいるのですが、この年になって一人は寂しいので結婚相手を探しているんです」
「そうなんですね。結婚相談所とか婚活パーティーとかに参加されたりしているんですか?」

「はい。一年くらい前から登録して、何人かの方とも会ってみたりしました。
その中で、二人候補があって…。今日は先生に、どちらの方が良いか占ってもらおうと思いまして参りました」
「わかりました。少々お待ちくださいませ」

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零美は、相談者の吉本京子と、候補の男性である田中氏と水野氏の命式をプリントアウトし、テーブルの上に並べた。

「田中さんと水野さん、タイプは違いますが、それぞれ素敵な男性だと思いますよ」
「そうですねえ…。田中さんは背が高くてスラっとした方で、顔の好みで言えば私は田中さんの方に惹かれました。物腰も柔らかで優しい話し方をされます。
一方の水野さんは、お腹が出ていて顔もふくれた感じなんですが、ユーモアがあって話していて楽しいです」

「吉本さんは、財運に恵まれないように思うのですが…」
「そうなんです。今私はデパートの食品売り場でパートしているんですが、将来の経済的な不安もあって、結婚したいなって思っているんです」

「お二人を見比べてみると、財運があるのは水野さんですね」
「そうなんです。資産家なのは水野さんなんです。不動産をたくさん持っていて、家賃収入も入ってくるのでお金はたくさんあります。
田中さんは普通のサラリーマンなので、将来的には年金収入だけになりますかね」

「田中さんは細かい所まで気にする感じがしますね」
「ああ、やっぱり…。洋服や持ち物を見ても、こだわりがあるのかなと思います。何事もきっちりしないと気が済まないかもです」

「吉本さんは、割と細かい事は気にしないタイプですかね」
「はい、私はあまり気にしないです。お金がなかったら我慢しますし、美味しいものもそんなに食べたいとは思わないですね」

「そう考えると、水野さんの方が吉本さんに近い気がしますね」
「はい、私もそう思います。話していても緊張しないっていうか、気が楽なのは水野さんですね」

「お金に余裕があるっていうのは大事だと思いますよ。お金がないと精神的に余裕がありませんが、お金の心配をしないというだけで、精神的に余裕が出てきますから。
おそらく水野さんは、サービス精神も旺盛な方だと思います。困っている人を見ると助けたくなる方ですね。
それがまた、巡り巡って自分の所に戻ってくるんでしょうけど」
「私も、人が困っていると放っておけない質(たち)というか…。その人の喜ぶ姿で満足しちゃって、自分が貧乏してても物をあげちゃうっていうか…」

「吉本さんと水野さんはとても感性が似ているので、共感できると思うんですね。
これから八十過ぎまで生きるとしても、あと三十年は一緒に暮らすわけですから、共感出来るかどうかって大事だと思います。

顔や体型なんて、年とともに誰でも崩れていきますが、心は変わらないですからね。水野さんだったら、いつまでも若々しい心を持って生きられる方なんじゃないかなと思います。

あと、お金というのはやっぱり、避けては通れない問題なわけで…。お孫さんはおいくつなんですか?」
「二歳の女の子と、生まれたばかりの男の子がいます」

「これからお金がかかりますよね。おばあちゃんとして、いろいろと買ってあげたいじゃないですか」
「そうなんです。おもちゃとか服とか、学校に行くようになればランドセルとか机とかですね」

「はい。そうなると、現実的に考えて経済的に余裕のある水野さんなら、吉本さんのために協力できることが多いと思うんですね。
田中さんが出来ないというわけではないんですが、年金のみでの生活となると、今までの貯えがどれほどあるかで老後の生活が変わってくると思うんです。さすがに田中さんの貯金額まで聞けませんよね」
「それはちょっと出来ませんね」

「もしかしたら、田中さんもたくさん預貯金があって、相当な資産家なのかも知れませんが、今の時点では確かめようがないし、預貯金は目減りしますが家賃収入は継続的に見込めます。
また、何と言っても一緒に居て気が楽というのが一番大切だと思いますので、水野さんの方が吉本さんに合っていると思われます。
「はい、私もそう思います。先生、今日はどうもありがとうございました」

彼女が帰っていったのを見届けて、奥から和彦が出てきた。

「あの人、最初っから水野さんに決めてたんじゃないかな?」

和彦の言葉に零美は、少しだけ笑みを浮かべた。

「私もそう思う。きっと、たとえ相性が悪いって言われても、水野さんを選んでいたんじゃないかな」
「水野さんとの相性はどうだったの?」

「悪くないわ。本当に合わなかったら勧めてないけど、相性という点でも水野さんの方が良いと思う」
「相性が悪くても水野さんにするつもりだったら、どうして占いに来たのかな?」

零美は、少し残っていたコーヒーを飲み干すと和彦に言った。

「やっぱりさ、背中を押してほしいのよ。大丈夫だって言ってほしいの。占い師に。
占いってそういうもんじゃない?」

零美の目がいたずらっぽく見えた気がした和彦だった。

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