第14話「息子に会社を継がせたい母」

知性や品格は、内面からにじみ出るという事を和彦は実感していた。
六十代前半と推察されるその女性は、凛とした美しさを携えていた。

「お電話いたしました、伊藤真利子でございます」
「お待ちしておりました」

零美に深々とお辞儀をするその様から、尊敬と信頼の思いが和彦に伝わってきた。
そして、深いお辞儀にお辞儀で返す零美も、礼儀においては負けていないと、どこか誇らしげである。

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「実は、私の夫は七年前に亡くなって、その後は夫が興した会社を私が引き継いで社長になってやってきたのですが、ゆくゆくは息子を社長にしたいと思っておりまして……」
「そうなんですね」

「はい。それで、まずは今年三十二になる息子にお嫁さんをと思いまして、いろんな方からお年頃のお嬢さんたちを紹介して頂いたのですが…。
息子と相談しながら決めているのですが、最終的に絞った二人のうちのどちらにしようかと決められずにおりまして。

それで先生のお噂をお聞きして、ご相談に参った次第でございます」
「わかりました。それでは少々お待ちいただけますでしょうか」

零美は、真利子と息子の京介、そしてお嫁さん候補二人の命式をプリントアウトし、彼女の目の前に並べた。

「息子さんはとても優しい方です。感受性が鋭くて、相手の気持ちを見抜いてしまいます。神経でナイーブで傷つきやすいため、他人に対しても傷つくような言動をしたくないと思っています。また、頭の回転が早く、危険回避能力が高いと言えるでしょう。
社長というのは、ある面、孤独な立場ですから、孤独に強い精神力が必要かなと思うんです。そう考えると、社長と言うよりも社長を支える立場が合っているのかなと思います。

でも、奥様としては息子さんに社長になってほしいわけですよね?」
「はい…。一人息子なもので、どうしても彼に期待してしまいます」

「実は奥様も、息子さんの優しさが気になっていらっしゃるのではないですか?」
「ええ、そうなんです…。気弱というか、優しすぎるというか、社長には向いていないのかなと思ったりもするのですが……」

「そう考えますと、息子さんの奥さん候補の方は、逆に強気の方が良いかも知れませんね」
「強気の方ですか…」

「はい。夫婦揃って優しすぎても、難しい局面を迎えた時に乗り越えるのは難しいかも知れません。夫が弱くて妻が強いという夫婦は多いです。

このお二人を見てみますと、お二人とも強い女性だと言えます。
まず恵美さんですが、自我が強い方です。自我が強いという事は、自分に自信があって自分が正しいと思っています。美人という事もあり、自信に満ち溢れています。

能力も高く、何でも出来てしまうので、悪い言い方になりますが、少し人を見下す傾向にあります。たとえ本人にその自覚がなくても、周りの人はそう感じてしまうのです。強運の持ち主である事には変わりありませんが…。

もう一人の静香さんですが、この方は可愛い顔をしていますが、内面は男性的です。
この人の強さは、正義感が強くて、義理堅い、目的意識が強いという事です。恵美さんとの違いは、強さを相手に向けるのではなく、自分に向けているという事です。

恵美さんの場合、相手より上回りたいという意識がありますが、静香さんの場合は、自分の理想に近づくために自分を律したいという思いなのです。

運の強さという事だけを考えると、恵美さんの方が断然運が強いです。もし恵美さんと結婚したら、夫が社長と言うよりも、妻の方が社長だと周りの人は思うようになります。男女逆転現象ですね。まあ、それでうまくいっている会社もあるわけですが…。

こちらの静香さんの場合は、ビジネスパートナー的な存在になる感じです。あくまでも夫が社長であり、その夫を陰でサポートするイメージです。この場合、内助の功というよりも、実質的な会社運営のサポートになるでしょう。

恵美さんも静香さんも、どちらも家庭的な女性だとは思えません。家で夫の帰りを待つという雰囲気では二人ともないのです。その中でも、恵美さんは自分が脚光を浴びたいタイプですが、静香さんは組織を守る事を第一と考えるタイプです。

強運の持ち主である恵美さんと、ビジネスパートナーとして頼りになる静香さん、奥様としてはどちらが息子さんの妻にふさわしいと思われますか?」

「そうですねえ……」

真利子は考え込んでいた。

「そう言われると、なかなか決めるのが難しいですねぇ…」
「はい。まあこれは、命式から判断しただけですから、実際のお二人に会ってみればまた、違った判断になるかも知れません。
どのようにご両親に育てられたのか、どのような友人がいたのか、思想的に影響力のある人に出会ったかなどで、人の考え方などは変わるものですから。

『家庭的な女性ではない』というのも、もしかしたら全く違うかも知れません。母親の教育などが関係しますしね。
あくまでも参考程度にして頂いて、息子さんとよくご相談なされたら宜しいかと思います」
「はい、わかりました。今日はどうもありがとうございました」

零美の話を詳しく書いたメモをカバンに入れ、丁寧なお辞儀をして帰っていった。
その様子を見ていた和彦が零美の元にやってきた。

「君は、どっちが息子の嫁にふさわしいと思う?」

和彦に聞かれ、真剣に悩む零美。

「いろんな情報が少ないから、正確な判断は難しいわね。
あの人の会社の業績が上向きなのか下向きなのか。もし下降気味なら、強運を持つ恵美さんがいいかも知れない。
でも、恵美さんは強すぎるから、息子さんの精神がついていけないかも…。
私の中では静香さんが無難かな」
「そう言うと思ったよ」

和彦は、自分の予想が当たって嬉しそうだった。

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