第17話「告白したい女の子」

その女性は緊張していた。離れていても、和彦にはその緊張感が伝わってきていた。下を向いたままでなかなか顔を上げない彼女に、零美は優しく声をかけた。

「今日はようこそおいでくださいました。お電話頂いた桐山麗奈さんですよね?」
「は、はい…。桐山です…」

「どうぞ、こちらにおかけください。今お飲み物をお持ちしますね。コーヒー、紅茶、緑茶とありますが、何がよろしいですか?」
「あっ、えーとっ、あっ、じゃあ、紅茶で…」

「紅茶ですね。少々お待ちください」

零美はカップに紅茶を注ぎ、チョコレートを二つ添えて彼女の前に置いた。

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「ご相談したい事はどんな事ですか?」
「はい…。私、占いは大好きで、よく雑誌の占いとか気にしたりするんですが、こういう風に本格的に占ってもらうのは初めてで…。何を言ったらいいのか……」

「では最初に、こちらにあなたのお名前と生年月日を書いてもらえますか?生まれた時刻なんかもわかりますかね?」
「はい。母から聞いています。朝の四時十分だったって…」

麗奈は自分の名前と生年月日を書いた。

「十七歳、高校二年生ですか?」
「はい」

「十七歳かあ、若いなあ。私もう三十になったけど、まだまだ若いつもりよ」
「えっ? 三十なんですか? 全然若く見えます。 二十五とか…」

「ほんと? ありがとう。麗奈ちゃんにはサービスしなくちゃね」

和彦には、零美と麗奈の会話が微笑ましく思えた。そして、零美の高校時代の事を思い出して懐かしかった。また、麗奈の事を娘のような目で見ている自分が、すっかりオジサンに思えておかしかった。

「高校生の悩みって、やっぱり恋愛じゃない?」

零美にそう言われて、恥ずかしそうに麗奈は答えた。

「はい…。実は、好きな人がいて…。その人に告白しようかなって思っているんですが、私の事をどう思ってるのかなあって気になって…。
先生は霊視もするって聞いたから、怖いけどやってもらおうかなって……」
「そうなのね。良かったら、その人の写真はあるかしら?」

「はい、スマホに画像があります」

麗奈はスマホを取り出し、零美に手渡した。

「なかなか真面目そうな男の子ね」
「はい、とても真面目です。頭が良くって、学年でもトップの方です」

「彼の生年月日はわかる?」
「はい。生まれた時刻まではわかりませんが」

麗奈は彼の名前と生年月日を紙に書いた。
零美は二人の命式をプリントアウトして、彼女の前に置いた。

「確かに彼は頭が良いわ。学者タイプって感じね。人に教えるのが上手いはずよ」
「はい。私も時々教えてもらっています。とってもわかりやすくて助かっています」

「彼は想像力も豊かね。でも麗奈ちゃんは、彼以上に『夢見る夢子ちゃん』だけどね」
「あははは! そうなんです。私って、妄想ばっかりしています」

零美は、彼の写真をじっと見つめていた。

「彼はね、今は恋よりも勉強がしたいって感じよ」
「えっ? そうなんですか……」

「うん。彼は、かなり未来の事も考えている人だわ。彼のお父さんはどんな方かわかる?」
「彼のお父さんはお医者さんで、将来は僕も医者になりたいって言っています」

「そうなの……。彼は、お父さんの事をとても尊敬しているように思うわ。医者になれと言われたからなるんじゃなくて、自分からなりたいと思ったようね」
「へえー、そうなんですか。すごいなあ」

「彼の写真から、彼のお父さんの事まで伝わってくる。お父さんはとても人格者だと思う。彼はお父さんのような医者になりたいのね」
「確かに、彼は顔も性格もお父さんに似ているって聞いた事があります」

「彼は、人の為に役に立ちたいという思いが強いのね。そして、そういう生き方の人が好きだし、尊敬している。
麗奈ちゃんも、自分の事よりも誰かの為になる事をしてあげたいって思ってるのね。だから彼の事を思うと、告白なんてしたら勉強の邪魔になるかも知れないって思ってるようだけど、違うかしら?」
「えっ? どうして……どうしてわかるんですか?」

麗奈は、零美の言葉が図星だったようで、とても驚いていた。

「彼は、麗奈ちゃんの良い所をしっかりと見ていてくれているように感じるわ。嫌いなイメージはないと思う。むしろ、好意的に思ってるんじゃないかしら」
「そうなんですかあ! うれしいなあ」

「でも、彼は恋愛が上手なタイプではないわよ。優しい人なんだけど、女の子の気持ちには鈍感という感じなの」
「はい」

「一般的な男子高校生のように、女の子の事で頭がいっぱいって人じゃないのね。彼の場合は、医者になるという目標で頭がいっぱいなの。
もしあなたが『付き合ってください』って告白したら、多分『いいよ』って言うと思う。だけど、それはあなたを傷つけたくないという彼の優しさなわけで…」
「……」

「それで、あなたも優しいから、彼の勉強の邪魔はしたくないってなると思うから、あなたが思い描くような『ザ・恋愛』って感じにはならないかなあって思うのね…」
「はい……」

「余計な事言っちゃってごめんなさいね。もちろん、あなたが告白するのはダメって言ってるわけじゃないし、彼と付き合うのはダメって言ってるわけじゃないの。ただ、勉強が第一の人だから、あなたの事が第二になっちゃうって事がどうなのかなあって思ってね」
「そうですねえ。彼がそういう人だって事はわかりました。でも、私が好きだって事をちゃんと知ってもらいたいってのがあって…。
女子の間で彼の事が好きなんて言うのは、ホントに私ぐらいなんです。みんなは『勉強ばっかりしてる奴のどこがいいの?』って言うんですけど、私は、彼のそういう真面目な所が大好きなんです。だから……」

下を向いた麗奈の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれた。
零美は麗奈の隣に座って、しっかりと彼女を抱きしめた。

「うんうん、わかった。わかったよ。麗奈ちゃんの熱い気持ちが私にずしーんって伝わった。ごめん、ごめんね。ひどい事言っちゃったね」

零美は麗奈の体を抱きしめながら、同じく大粒の涙を流していた。その光景を奥から見ていた和彦は、なぜ麗奈や零美が泣いているのかわからなかったが、思わず彼ももらい泣きしていた。
日曜の午後、時間はゆっくりと流れていた。

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