第18話「母になりたい女」

昼下がりの午後、汗をかいた体格の良い女性が零美の店にやってきた。

「あのう…、お電話した斎藤加奈です…」
「どうもいらっしゃいませ。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

「お飲み物は何がよろしいですか? コーヒー、紅茶、緑茶などありますが…」
「それでは、アイスコーヒーでお願いします」

「少々お待ちくださいね。その間、こちらにお名前と生年月日を書いていただけますか?もし生まれた時刻がわかれば、それもお願いします」

零美は、アイスコーヒーと、自分用のホットコーヒーをいれてテーブルに置いた。

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「じゃあ、今から命式を出しますね」

パソコンに入力した後、プリントアウトして加奈の前に置いた。

「斎藤さんの心配事と言ったら何でしょうか?」
「はい、あのう…。私は主人と結婚して十年になるんですが、なかなか子どもに恵まれなくて…。これから生まれる見込みはあるのかどうかを知りたくて……」

「母親になりたい気持ち、同じ女性として私もよくわかります。病院で検査はされたんですか?」
「いえ…。産めないと言われるのが怖くて、なかなか行けないっていうか…」

「ああ、そうなんですねえ…。今は、不妊治療など医学が発達していますから、専門医にご相談されるのがよろしいと思います。また、男性側に問題がある場合もありますが、今は無精子症の患者の精子細胞を、直接卵子に注入する治療法で赤ちゃんが生まれています」
「そうなんですか…」

「はい。また、海外で代理母出産する方もいらっしゃいますし、それでも難しい場合には、養子を迎えるというご夫婦もいらっしゃいます。ですので、母親になれないという事は考えない方が良いと思うのです」
「そうですねえ…。でもやっぱり、できれば自分のお腹で出産したいという思いがありまして…」

「それでしたら、まず病院で検査を受けましょう。そして、夫婦共に自然妊娠が可能かどうかを判断する事が先ですね。
もし自然妊娠が可能なのに妊娠しないとしたら、妊娠しやすい環境を整える事が大切です。斎藤さんは元々、体に水が溜まりやすく、お体が冷えやすいですね」
「はい、冷え性で困っています」

「体が冷えていると、なかなか妊娠しづらいですから、まずは冷え性の克服が第一ですね。運動をして体を絞っていきましょう。家事をしながらも、意識次第で運動効果が上がりますから。
また、冷たいお飲み物がお好きなようですが、出来れば温かい飲み物とか、食材も体を温める根菜類、サラダなども温野菜にするとか、口に入れるものも気をつけたいですね」
「はい」

「ちょっとすいません、お腹に触ってもよろしいでしょうか?」
「…はい」

零美は立ち上がって、下着の下の彼女のお腹に直接手を当てた。

「お腹が冷たいですね。お腹や骨盤の中に大事な臓器があるわけですから、意識して温めてあげたいですよね」
「そうですね、すいません…」

「それから、月経周期のチェックや、毎日の体温は表に記入していますか?」
「いえ、していませんでした」

「女性は妊娠しやすい日がありますから、その日に合わせてご主人にも協力してもらわないといけませんね。その日の一週間ぐらい前から精子を溜めておいて、三日ぐらい続けてチャレンジするとかですね。
やはり何事も、むやみにやっても結果は出ないものです。計画的に継続してこそ、妊娠する確率が高くなります」
「はい」

「あとですね、斉藤さんは、小さなお子さんを連れているご夫婦を見て、嫉妬しっとしたり羨うらやましく思ったりしないですか?」
「えっ、あっ、はい、思います。羨ましいなあっていうか、どうして私たちじゃないのかなあって……」

「そうですよね。そう思っちゃいますよね。子どもが欲しいのに恵まれない家庭は、みんなそう思いますよね。
そこでですね、嫉妬しっとじゃなくて『おめでとう』って思えたらいいんですけどね。物事には順番があるって言うんです。先に子どもが生まれた人たちを『おめでとう』って祝福出来たら、次はあなたの番になるって言うんですよ。

これはよく、営業の世界で聞くんですけどね。同僚の実績を心から称賛出来たら、今度はその人に実績が出るって言うんです。
神様がいるのかどうかはわかりませんが、もし神様がいるとしたら、自分は恵まれないのに、恵まれた人の事を自分の事のように喜んであげられる人がいたら、今度はその人に恵みを与えたいと思うんじゃないかって言うんですよ。

もし神様が、人間に子どもを与える権限を持っているとするなら、たとえ他人の子どもだとしても、自分の子どものように大切に思ってくれる夫婦に与えたいんじゃないかなって思うんですよね。どうですか、そう思いませんか?」
「……はい、そうだと思います」

「自分の出来る事は精一杯やってみて、それでも難しかったら、その時は神頼みかなって思うんです。まあ、助けてくれるのが、神様なのか仏様なのかはわかりませんが…」
「なるほど……」

「“人事を尽くして天命を待つ”という言葉がありますが、まずは自分の出来る事をやり尽くす事が大切かなあって思います。命式を見ると財運のある方ですから、子宝にも恵まれるはずだと思います。まずは病院に行く事と、体質改善を目指して頑張りましょう」
「はい。どうもありがとうございました。頑張ってみます」

笑顔で彼女を見送った零美のもとへ、奥から和彦がやってきた。

「あの人、子どもに恵まれたらいいね」
「うん。頑張ればきっと大丈夫よ」

「僕たちも頑張ってみるかい?」
「うん……」

力のない返事をする零美を見た和彦は、彼女の心がまだ完全には癒いえていない事を思い知らされてしまった。

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