第26話「夢に出る母の事を気にする女」

零美の店には常連の客がいる。今来ている新藤麻里もその一人だった。
地味めな服装にメガネをかけ、顔はそれほど美人ではないが、愛嬌があって可愛らしい、どこにでもいる普通のOLである。彼女は占いが大好きで、零美を信頼して気になる事を相談しに来るのだ。

「先生、実はこのところ、亡くなった母が夢に出てくるんです。三日間続けてなので、何かあるのかなと思いまして……」
「麻里ちゃんのお母さんって、三年前に亡くなったのよね?」

「はい。亡くなってから何度か夢に出たんですが、こんなに続けて見るなんて初めてだったので、何か教えたい事があるのかもって思ったんです」
「そうかもね。お母さんの写真はある?」

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「はい、これです」

麻里は、スマホに残してある母親の画像を見せた。
零美はそれをじっと見つめ、画像からのメッセージを受け取ろうとしていた。

「麻里ちゃん、お母さんは少し心配していらっしゃるわ」
「心配って何でしょうか?」

「お母さんの胸のあたりに強い痛みを感じるの。麻里ちゃんの未来を案じているみたいだわ」
「私の未来!? 私の未来って何でしょうね?」

「今、何か悩んでいる事があるんじゃない? 決断を迫られている事が…」
「決断ですか…。それはもしかして、結婚の事なのかな……」

「結婚って、付き合っている人がいるの?」
「はい。金井悟郎さんという人なんですけど…」

「この人は、相性見た事あったかしら?」
「いえ、最近付き合い始めたばっかりなんです。まだひと月も経っていないです」

「それで結婚!?」
「はい。何かすごく気が合うっていうか…。いつか先生に占ってもらおうと思ってたんですけど、母の夢の方が気になっちゃって」

「おそらく、お母さんの心配はその彼の事のようよ。ちょっとその人の生年月日わかる?」
「はい」

零美は二人の相性を見るため、命式を出して麻里の前に置いた。

「かなり年下ね。お仕事は何をされているの?」
「アルバイトで、友だちがやってるっていう便利屋を手伝っています」

「収入はどうなのかしら?」
「大変みたいですね。友だちの部屋に居候しているそうです。彼、バンドやってて…。メジャーデビュー目指して頑張ってます」

麻里はライブで撮った動画を見せてくれた。

「二人組なのね。結構いい曲じゃない」
「でしょ!? 売れると思うんですよね」

「この人、カッコイイからモテるでしょ!?」
「うーん、それがちょっと悩みっていうか…。ライブで出待ちしてる女の子もいたりして、心配だなって思ってるんです」

「結婚は彼が言い出したの?」
「いえ、私です」

「どうして?」
「彼が、好きだから一緒に住もうって言ってくれて。それで、私の部屋で同棲しようと思っているんですけど、彼モテるから、他の女に取られる前に結婚しようかなって思って…」

「それは彼に言ったの?」
「同棲はいいよって言いましたが、結婚の事はまだです」

「それよ。お母さんの心配は」
「結婚ですか?」

「そう。相手は九歳も下の二十一でしょ。あなたは三十歳。お母さんじゃなくても心配だわ。お金、貢いでるんじゃないの?」
「そんな、貢ぐだなんて…。ちょっとご飯を食べさせてあげたり、服を買ってあげたりはしたけど……」

「この人、お金にも恋愛にもルーズな人だから、付き合うのは考え直した方がいいよ」
「うーん……。確かに、いい加減な所は気になっていたんだけど…」

「音楽の世界で有名になるには、よほどの強運を持っていないと難しいと思う。この人の命式を見ても、残念ながら運の強さは感じられない。
たとえ本人にそういうものが無くても、パートナーであるあなたにそういうものがあればいいんだけど、あなたにもないから、たとえこの人があなたと結婚したとしても、世に出る事は難しいと思うわ」
「そうですか……」

麻里はがっくりとした表情を見せた。

「お母さんはね、あなたの事を心配して夢に出てきたのよ。ずっと見守ってくれてるんだから、お母さんを悲しませないようにしないとね」
「そうですね。私も、彼みたいな人がどうして私を選んだのか不思議に思ってたけど、よく考えたらお金だけが目的だったのかも。
彼におごってもらった事なんて一回もなかったし…」

「でも良かったわ、深く付き合う前に私の所に来てくれて」
「本当にそう思います。母が夢に出てきてくれなかったら、同棲してそのまま結婚って事になってたかも」

肩をすくめて苦笑いをした後、チョコレートを口に入れた麻里。

「麻里ちゃん、あなたのいい所は、悪い心を持っていない事なんだけど、世の中の人はあなたみたいにいい人ばかりじゃないのよ。誰でもすぐに信用しちゃダメなの。
何かあったら私に相談してね」
「わかりました、先生。ところで、母は他に何か言ってませんか?」

麻里からスマホを受け取り、零美は再び彼女の母親の画像をじっと見つめた。

「お母さんは、あなたの近くにいるお友だちを気に入ってるみたいだけど、心当たりある?」
「その中に入っている人ですかね? ちょっと見てもらえませんか?」

画面をスライドして画像をめくっていくと、気になる画像があった。

「お母さんは、この人の事が気になるみたい。この人はどんな人なの?」
「この人は職場の同僚です。真面目な人ですよ。映画が好きで、私も映画好きだから、たまに映画の話題で盛り上がります」

「そう。今度この人の生年月日聞いてきてよ」
「えっ!? ああ、この人が私に合ってるんですかね?」

「お母さんが言うにはね」
「わかりました。生年月日聞いてきますんで、今度またよろしくお願いします」

零美には、帰っていく麻里の背中に、彼女の母親の笑顔が視えた。

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