第34話「利用された女」

小柄なその女性は髪を短くしていたが、アイドルのような顔つきで、話し方はハキハキとしていた。

「予約しました志田佐紀です。今日は気になる男性との相性を見ていただきたいのです」
そう言って彼女は、自分の名前と相手の名前、そしてそれぞれの生年月日を紙に書いた。

「少しお待ちくださいね」
零美は二人の命式を出し、彼女の前に置いた。

「志田さんは愛情の深い方ですね。自分の事より人のために忙しく動き回っているタイプで、困っている人を見ると放っておけないって感じですね」
彼女は零美の言葉に素早く反応した。

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「そうなんです先生。よくわかりますね。本当に私ってお節介って言うか、世話好きなんです。周りの人から呆れられるぐらいなんですけどね。でもこれは母親の影響っていうか、母がそういう人なんです。だから、遺伝なんですかね。きっとそうですよね」
そう言って、顔を斜め左上に向けながら妙に一人で納得していた。

「そしてこちらの高橋さんはですね、非常に頭の回転が早い人です。人の心を見抜く所がありますね。喜怒哀楽の感情表現が豊かで、話も上手いんじゃないでしょうか」
「えー! 本当に当たってますよ。先生すごいです。やっぱり先生の所に来て良かったです。それで、彼と私の相性はどうですか?」

「結構合うんじゃないですかね。彼の足りない所をあなたが補い、あなたの足りない所を彼が補うという相互補完の関係です」
「えー、そうなんですかあ!? すごく嬉しいですう」
感情をストレートに表現する素直な子だなあと零美は思っていた。

「あのう……、彼は私の事、どう思っていますかねえ」
「そうですね、彼の写真とかお持ちですか?」

「はい、ちょっと待ってください」と言って、彼女はスマホの画像を零美に見せた。
零美はその画像をじーっと見つめた後、少し首を傾げた。

「うーん、おかしいですねえ。命式を見た感じではなかなか好印象の男性だったんですが……。この方、見た目からしてかなりのイケメンですから、女性たちからモテモテなんじゃないですか?」
「あー、彼とは最近知り合ったんで、今までの女性関係はわかんないんですけど……」

「この画像からは何か、嫌な波動を受けるんですよね。この方が今いる環境があまり良くない気がしますね。環境にとても影響されるって言うか、左右される方なんですよ。この方はどんな職業なんですか?」
「えっ!? あっ、えっと……、ちょっと言いにくい職業なんで……。すいません」
慌てた感じで口をもごもごさせていた。

「とにかく、この方からは危険な香りがしますね。確かに男性としては魅力的なんですが、何か怪しいと言うか、気をつけた方がいいと言うか……」
「ああ……」

「何か心当たりがありますか?」
「いえ、あの、はい、気をつけます。ははは……」

知られたくない秘密があるのか、彼女はそれ以上は何も言わなかった。自分の事は公務員だと言うだけで詳しい内容は言わないし、相手の男性についても知らないのか知られたくないのか、とにかく極端に情報が少なかった。
彼女が心をオープンにしないので、厚い壁のようなもので守られた深層部まで零美は辿り着く事が出来なかった。見た目の快活さに比べて大きなギャップが感じられた。

「先生、この人と私の恋は上手くいきそうですか?」
「えっ、ああ、はい、そうですね。惹かれ合う運命なのでしょうけどね。何かでも、本人たちの努力ではどうする事も出来ない大きな力が働いているようで、慎重に進めていかないといけないかなと思います」

「わかりました。ありがとうございます」
彼女は礼を言って料金を払い、急いで帰っていった。その後、店の奥から和彦が出てきた。

「彼女、何かワケありって感じに見えるね」
「そうね。もっと心を開いてくれたら、きっといいアドバイスが出来たと思うんだけど。どうも言いたくないというか、言えないような事があるみたいで……」

「占いってさ、信頼関係が大事だもんね」
「そう。こっちは、親兄弟以上に親身に心配してあげたいんだけどね。今回はちょっと残念だったなあ」

その日からしばらく経った後、零美は和彦からとんでもないニュースを聞かされた。

「ねえ零美、これ見てごらん」
和彦はスマホを零美に手渡した。それを受け取り、画面を凝視する零美。

「えっ!? この女性警察官の名前って……」
「この前来たあの人と同じだね。年齢も一緒。もうさ、本人の顔まで晒されてる」

ネットニュースに書かれていたのは、警視庁の元女性警察官が暴力団の男に捜査情報を漏らしていたという事件だった。彼女は地方公務員法違反で書類送検され、警察を依願退職していた。

「なるほど、自分は警察官で相手は暴力団だったのか。だから言いづらそうにしていたんだな」
「そうね、彼の写真を見た時に何か不安な感情になったのは、こういう事だったからなのね。あら……、上層部に発覚した時、すぐに別れればなかった事にするって言われたのに、別れたくないって言ったんだって。やっぱり結びつきが強すぎたんだわ」

「お金や情報を要求していたのは事実だけど、彼女を本気で愛していたって言う男の話、これってどう思う? 絶対利用してたよね」
「うん。多分ね。彼女は惚れっぽくて騙されやすい、彼は頭の回転が早くて言葉が巧みだから……」
零美は二人の命式を思い出していた。

「彼女さ、まだ関係を続けているみたいだよ。警察官から一転、今度はヤクザの女か。すごい激動の人生だね」
そう言って和彦は笑うが、零美は複雑な気持ちだった。愛を貫いた彼女は幸せになれるのか、警察を辞めて利用価値がなくなった彼女は捨てられてしまうのか……。
屈託のない笑顔が思い出された零美は、彼女の幸せを祈らずにはいられなかった。

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