第43話「運命の人なのか知りたい女」

見た目は今時の若い子らしく、人形のようなファッションで身を包んでいるその女性は、いたずらっぽい笑顔でドアを開けた。
「神崎初音さんですね、お待ちしていました」
「こんにちは、よろしくお願いします」と頭を下げ、意外と礼儀正しい。
「こちらへどうぞ」と誘導され、辺りをきょろきょろと見回しながら歩いて席に着いた。

「お飲み物はいかがですか?」
「カルピスください!」
少し驚いたが、「少々お待ちください」と笑顔で応答した。カルピスを頼む人はまずいないのだが、お中元でもらっていたカルピスがあったのでそれを出した。

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「神崎さんの気になる事は何ですか?」
「実は最近、運命の人かも知れないって人と出会いまして、その人との相性を見ていただけないかと思いまして」

「その方のお名前と生年月日はわかりますか?」
「生年月日まではわかりませんが、写真ならあります」
彼女はそう言って、スマホに残した画像を見せた。短髪に日焼け顔、ポロシャツから見える筋肉質の腕、すらりと伸びた長い足、なかなかのイケメンである。

「名前は新庄大吾さんです。偶然の出会いが何回も続いたので、もしかしたら私たち、運命の赤い糸で結ばれているのかなって思って……」
「偶然の出会いって、どんな事ですか?」

「私、地下アイドルやっているんですけど。新庄さんは、私の数少ないファンなんです。ライブをよく見に来てくれるんですが、仕事以外のプライベートの時に偶然出会ったんです。
最初は、埼玉の実家に帰った時に、私が家族と入ったレストランに偶然いらっしゃったんです。あの人は仕事でたまたま来てたって言って……。

その次は、これまたプライベートで、友だちと一緒に高尾山に登山していたら、あの人も偶然その日に登山に来ていて、ちょっとびっくりしました。高尾山が好きでよく登るんだって言って。

まあ、二回だったら偶然って事もあるじゃないですか。でも、最近三回目があって……。
私、映画が大好きなんですよ。話題作は見逃せない性分って言うかですね。この前見たのは、ヤクザと警察のやつで、グロいシーンもあるから友だちとは一緒に行けなくて、一人で観に行ったんですよ。

そしたら、何と偶然にも、新庄さんが私の前の席にいたんです。結構人が少なくて席が空いてたのに、予約の席が前後だったんですよ。それで何かこう、運命と言うかシンパシーを感じちゃって……。ああいう映画が好きな人って少ないと思っていたのに、まさかこんなに身近にいたなんて、本当に驚いちゃったんです。

それでその後、二人でファミレスに入って食事しながら、映画の感想を言いあったりしたんですけどね。この一か月の間に三回もプライベートで出会うなんて……。どうですか? 私とこの人は、運命の赤い糸で結ばれているんですか?」

彼とのいきさつを興奮して話す彼女の顔は少し紅潮していた。高ぶった気持ちを落ち着けようと、目の前のグラスを手にとり、冷たいカルピスを喉に流し込んだ。そして一息ついた後、零美の回答をじっと待った。

零美はと言うと、彼女の話を聞きながら、少し違和感を感じていた。あまりにも出来過ぎた話だった。埼玉の実家と東京八王子の高尾山、そう簡単に出会う場所ではない。しかも同じ時間帯に偶然その場所にいるなんて、あらかじめ予定を知っていたとしか思えない。

彼女は地下アイドルだと言うから、そんなに知名度があるわけではない。そういう彼女のファンになると言うのだから、世間一般の男子とは違う感覚を持ち合わせていると思われる。興奮気味の彼女と相対しながら、零美は言い知れない不安を感じていた。

「あのう……神崎さんはもしかしたら、新庄さんから何かプレゼントをもらわなかった?」
「プレゼントはいっぱいもらいます」

「新庄さんから一か月前にもらった中で、ぬいぐるみとか時計とか、家の中に置く物はなかった?」
「ああ、くまの大きなぬいぐるみをもらいました」

くまのぬいぐるみと聞いて、不安は確信に近づいた。そして再びスマホの画像をじっと見つめながら、あらゆるメッセージを受け取ろうとしていた。しばらく時間が過ぎた後、零美は彼女に、ある可能性を伝える事にした。

「この新庄さんの画像から伝わってくるのは、あなたに対する強い執着心です。この人はとても嫉妬深くて、支配欲が強いです。強いこだわりがあって、自分にも厳しいルールを課すのですが、周りの人にもそれを要求したりします。

もしこの人と付き合うようになると、常に行動をチェックされて束縛されてしまう可能性が高いです。いろんな事、たとえば仕事の事や服装、食べるものに対してもコントロールしようとするでしょう。それはかなり窮屈ですよね?」
「それはちょっと困りますね。でも、もしこの人が運命の人なら、私は運命に従わないといけないんでしょうか?」

「いえ……。私が思いますに、この人は運命の人ではありません」
「えっ!? そうなんですか?」

「はい。おそらく彼は……あっ、その前に、ちょっと待ってくださいね」
そう言って、紙に文字を書いた。そこには「彼からもらった物で今日身に着けていたりバッグの中に入っているものはありませんか」と書いてあった。

「いえ、何もありません」と彼女は答えた。それを聞いて安心したのか、ペンを置いて話し始めた。

「彼はきっと、くまのぬいぐるみの中に盗聴器を仕掛けています」
「えっ!? 本当ですか?」

「まだはっきりとは言えませんが、その可能性が高いです。知り合いの刑事さんに連絡してみますから、一緒に確認されたらいかがでしょうか?」
「あ、はい。お願いします」

彼女の顔は一転して青ざめていた。零美は和彦の友人である川崎刑事に連絡した。すぐにやってきた川崎刑事は話を聞いた後、彼女のアパートへ同行した。そして彼からもらったくまのぬいぐるみを調べた結果、やはり盗聴器が入っていた。

その後、ライブに来ていた彼に接触した川崎刑事は、彼の犯行である事を認めさせた。彼は彼女に謝罪し、川崎刑事と彼女に二度と接触しない事を約束した、と電話で聞いた零美は、不幸な事件に発展する前に対処できた事に安堵した。そして、これが彼女の今後のトラウマにならなければいいなと願わずにはいられなかった。

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