第六話「別れた彼女を諦めきれない男」

いかにも真面目そうな男性が、鑑定希望で零美の店にやってきた。銀縁メガネに七三分け、紺のスーツでいかにもサラリーマンの様相をしている。名前は進藤雅人。
彼の悩みは、三年付き合って別れた彼女が諦めきれないという。彼女の名前は三浦ひとみ。

零美は彼をソファーへと導き、所定の用紙に記入してもらいパソコンで命式を出した。

「どうして別れないといけなかったのかを知りたいという事ですね?」
「はい、そうなんです。僕は彼女に合わせるために一生懸命努力してきたんです。僕以上に彼女を愛してる人はいないんです。なのに、どうしてダメだったんですか? どうしても納得できないんです」

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「まずですねー、お二人の相性は良いと思うんです。あなたは彼女に尽くしたいと思っているし、彼女はあなたから尽くされても心の負担にならず心地良いと思っています。
また、彼女は生まれ持って強い運勢の持ち主で、一人でも生きていける人ですが、あなたは生まれ持って運勢が弱いので、一人では生きていけず、誰かに助けてもらわなければなりません。そういう意味では良い組み合わせだと思います。

彼女はとても理想が高い完璧主義者というか、なかなか妥協が出来ない人です。あなたはあまりこだわりを持たない、良い意味で『いい加減』な人なのですが、彼女はそういうあなたを許せない思いがあるんです。

『こうでなければならない』『こうであるべき』という思いが強いので、『まあ、だいたいでいいじゃん』というあなたを許せないというか。また、彼女はあなたを許せない自分が許せないという、非常に難しい人なんですね」
「そうなんですよね。とても真面目に考えているというか…」

「あなたは誰かに助けてもらわないと生きていけない人なのですが、彼女は一人でも生きていける強い人です。結婚したら相手に合わせないとうまくいきません。しかし、相手に合わせるのが苦手な彼女は、結婚に対して自信がない。あなたにとっての理想の妻にはなれない。だから自分から身を引いたのです」
「僕のためにですか?」

「はい、あなたのためにです。というか、自分のためでもあります。あなたとは理想の家庭を作れないと……」
「僕じゃダメだって事ですね。僕じゃ彼女を幸せに出来ない、ということですよね?」

「まあ…そういう事です…」
「なるほど……。まあ、納得しました。僕は彼女を幸せに出来ないと……。他に彼女を幸せに出来る人がいるって事ですよね?」

「はい」
「わかりました。彼女が幸せになれるんだったらそれでいいんです。どうもありがとうございました」

男性は納得して帰って行った。
奥から顔を出した和彦が話しかける。

「彼は本当に納得出来たのかな?」

テーブルのコーヒーカップを片付けながら零美は答えた。

「簡単には納得出来ないと思うけど、なんとか自分に言い聞かせてるって感じだったね」
「彼は確かに優しそうで、若い男性にしては覇気が無いって感じに見えるな」

「彼女が強い女性だから、彼みたいな弱い男性が組み合わせとしてはピッタリなんだけどね。強い女性に強い男性だと反発して別れちゃうから」
「じゃあ、どうして彼女は別れたの?」

「彼女が思い描く理想の家庭像があると思うんだよね。夫がしっかりしていて、妻は夫の言う事についていく、みたいな…。でも、彼にはそれが期待出来ないって言うか、彼女がリードしてあげないといけなくなっちゃうんだよね。彼女は頭も良いしオールマイティーに何でも器用に出来る人だから、どうしても周りの人を下に見ちゃうところがあるの。

初めてやる事でも簡単に出来るところがあるので、『どうしてこんな簡単な事が出来ないのかしら?』って見下すって言うか…。こう言っちゃあ悪いけど、おそらくさっきの彼も見下される方のタイプになっちゃうと思う。

だから、彼女が男性として尊敬出来る人となると、かなりの高い基準が求められるはず。彼にそういうのを期待したんだろうけどね。彼も真面目な人だから、彼女の期待に一生懸命に応えようと努力していたんだろうけど、彼女の求めるレベルまでは到達出来なかったというか…。

まあ、私が思うに、彼女の期待通りの男となると、とんでもなく傲慢で嫌な男しかいないと思う。だから多分、彼女がそういう男に巡り合うというのは……」
「まず無理だよね」

「そういう事。だから彼女は、一人で生きていく事になりそうかなあ」
「確かにね。そんな条件の良い男と巡り合うなんて、どれほど天文学的な確率が必要かと思うよ」

「人間ってさ、どっかで妥協しないといけないよね」
「零美もかなり妥協しちゃったね。僕みたいな男と結婚しちゃってさ」

「あなたの方こそ、私みたいな強い女と結婚しちゃって後悔してない?」
「いや、全然思わないな。君の強さは嫌味のない強さだから。人間的な強さというか、人間力が強いというか、とても尊敬出来るよ」

「私もあなたの事はとても尊敬しています。私、料理が得意じゃないもんね」
「じゃあ、ご飯食べようか?今日はカレーだからね」

「わーい、カレー大好き。私って子どもみたいだね」

零美はそう言いながら、カレーが好きだった和美の事を思い出していた。

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