第62話「双子の妹」

「先生、双子なのに、どうして姉と私の運命は違うんですか?」
ショートカットが似合う、瞳の大きな女性の心の叫びだった。

彼女は平日の夕方にやってきた。前日に「占ってほしいんですが」と予約していた二十八歳の女性だ。会社帰りらしく、紺色の制服が似合う可愛らしい女の子だった。

「島田瑞希さんですよね?」と声を掛けると、「はい、今日はよろしくお願いします」と頭を下げた。背は低いが、明るく元気な感じが魅力的に感じられた。

テーブル席に案内し、ホットコーヒーを届けると、「ありがとうございます」と弾けるような笑顔が返ってきた。零美には、彼女の悩みが何なのか想像もつかなかった。

対面に座り「島田さんの相談事は何ですか?」と切り出すと、「実は…」と言い、先ほどとは一転して神妙な面持ちになった。

「私には、顔がそっくりな双子の姉がいるんですけど、似ているのは顔だけで、後は全っ然違うんです。頭も運動神経も性格も姉の方が良くって、私はずっと比較されてきました。

姉は三年前に結婚して、優しい旦那さんと子どももいるのに、私はまだ独身で……。どうしてこんなに違うんでしょうか?」

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顔は笑顔だったが、その目は哀しそうな心の闇を表わしているように見えた。小さい頃から優秀な姉に比較されてきたとしたら、あまりにも可哀想な話である。

人は誰でも、他人の評価に合わせようとする性質がある。「おとなしい子」と言われ続ければ「おとなしい子」になろうとする。言葉は、薬にもなれば毒にもなる。

「姉は優秀で妹はダメ」と言われ続けたとしたら、その枠に自分から合わせようとするのが人間だと言うのだ。それは特に従順な人に起きやすいのである。

零美自身、「霊感が強い子」として特別な目で見られてきた。同級生たちからも距離を置かれ、自然と孤立しがちだったため、彼女の気持ちに共感するものがあった。

「生年月日が同じ双子でも、生まれた時刻が違います。四柱推命では出てくる星が変わってきます。また、長子は父方の家系の影響を受け、次子は母方の家系の影響を受けます。
ですから、お姉さんは父親に似て、あなたは母親に似ていらっしゃるのではありませんか?」
「そうですね、確かに姉は父に似て社交的で友だちが多いです。私は母に似て内向的で控えめだし、あまり自己主張しないから損しやすいです」

彼女の母方は宗教性が強いのだろう。姉に比べて彼女は、目に見えるものよりも目に見えないもの、より内面的なものを求めているようだ。彼女は、自分の内面の良さを評価してもらえていない事に不満を感じているのだ。

「先生、私は結婚できますか?」
「できますよ、もちろん」

「どんな人が私に合ってますかね?」
「そうですね……。ちょっと待ってくださいね」

そう言って席を立った零美は、店の奥に引っ込んだ。和彦はちょうど、パソコンで夕飯のメニューを考えていたところだった。

「ねえ、和彦さん。ちょっとお客さんに会ってくれるかしら?」
「いいけど、どうしたんだい?」

「結婚できるかなって悩んでいる子がいるの。ちょっと私と似ているのよ。彼女に会って大丈夫だよって励ましてくれないかなあと思って」
「いいよ、今行く」

和彦は零美と一緒に彼女の前に現れた。彼女は驚いて立ち上がり、「こんにちは」と頭を下げた。「夫の和彦です、どうぞよろしくお願いします」と和彦も頭を下げ、彼女に座るよう促し、自分も座った。そして零美が和彦の横に座り、話し始めた。

「私もね、島田さんのようにコンプレックスの塊だったんです。子どもの頃から霊現象に悩まされて、普通に生きている周りの友だちが羨ましかったって言うか……。そんな私を救ってくれたのが、この人のお母さんでした。

この人は、私に対して普通に接してくれました。普通の女の子として見てくれたんです。それで、彼は私にとって、心が許せる唯一の異性になっていったんです」

恥ずかしそうに頭をかく和彦。続けて、和彦が話を始めた。

「夫婦って、お互いの足りないところを補い合うパートナーだと思うんですよ。相手の欠点を責めるんじゃなくて、黙って補ってあげる。それが夫婦じゃないかなあと……。だからあなたにも必ず、そういう男性が現れると思いますよ」

二人の話を聞き、彼女は両目を潤ませていた。

「私が断言します。この一、二年以内に、必ずあなたに相応しい相手が現れます。もし気になる人がいたら、また来てくださいね、相性見ますから」

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」
そう言って彼女は、両目の涙を指で拭うと、精一杯の笑顔を見せた。

零美は鑑定の際に、時折和彦に手伝ってもらう事がある。零美にとって鑑定は出産と同じ、相談者を新しく産みかえる作業と考えている。

子どもを産むためには、母親と共に父親も必要である。和彦は相談者にとって父親のような立場になるのだ。こうして二人が、母親と父親の立場になって相談者を新しく産みかえる事により、零美と和彦の絆も深まるのである。

来た時には不安を抱えていた彼女は、帰る時には希望を胸に抱いて帰っていった。その後ろ姿を見送りながら、零美と和彦は、お互いが必要な存在である事を確認していたのだった。

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