第65話「タレントの恋愛が心配なマネージャー」

「先生、これから私が話す事は、絶対に誰にも言わないという約束をしてくれますか?」
「はい、もちろん。お客様の秘密は絶対に守りますから、安心してください。今日は夫は出掛けていて、私一人しかいませんから」

「では念のため、この誓約書にサインしていただけますか?」と言うので、「よろしいですよ」と零美は書類にサインをした。

シックな紺のワンピースに身を包んだショートカットの女性、彼女の名前は間宮綾子。ある芸能事務所のやり手のマネージャーである。その誓約書には、女性社長の楠田美津子の名前があり、楠田社長の指示で彼女はここに来たのだ。

「すいませんねえ。これはウチみたいな小さな事務所にとって一大事なので、社長がどうしても先生の意見を聞いてこいと言うので……」
「私でお役に立てるかどうかわかりませんが、どういった話でしょうか?」

「実は、私が担当している新井みずきという女優の事なんですが……」
「新井さんて……人気女優の?」

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新井みずきは十代から活躍していて、ドラマや映画などで主演すればどれもヒットすると言われている。そんな人気女優に関する事とは何だろう、と零美は考えていた。

「新井さんがどうしたんですか?」
「実は、これはまだ誰にも知られてはいけない事なので、くれぐれも秘密にしていただきたいのですが……。

ある男優と恋仲になりまして、交際を反対されるなら女優を辞めるって言うんです。事務所としては、稼ぎ頭の彼女に辞めてもらうと困るので、先生に二人の相性はどうなのか聞いてこいと……。

自然消滅するならそんなに心配はしないのですが、もし結婚まで行き着くなら、相手の男性は彼女の運気を上げるのか下げるのか、それが気になるところなんです」

確かに、CMの本数もトップクラスの彼女が、事務所の命運を握っているというのは理解できる。もしその男性と結婚する事で運気が下がり、仕事が減るような事になれば、事務所にいる大勢の社員の生活にも影響が出るのだから。

零美は二人の名前と生年月日を紙に書いてもらった。相手の男性の名前は飯沼慶太、やはり名の知られた俳優だ。二枚目と言うよりも、個性派としてドラマや映画に欠かせない存在である。二人の命式を出した零美は、間宮に説明を始めた。

「お二人とも、若い頃からドラマや映画などでよく見させてもらっていますが、新井さんも飯沼さんももう三十歳なんですね。どちらも知名度が抜群だから、お付き合いも大変なんじゃないですか?」
「それは、事務所のスタッフが協力しています。飯沼さんの事務所とも相談しながらやっています」

「この命式を見ますと、新井さんは特殊な生まれなんですね。とても強いと言いますか。そのため、平凡な生活よりも芸能界のような特殊な世界がぴったりだと思います。こういう人が平凡な生き方をしては、かえって良くないと言いますから」
「はあー、そうなんですね」

「しかし、この強すぎるって言うのが難しいところなんですよ。うまくコントロールしないと暴走してしまいます。

そこで、男女の組み合わせと言うのは、お互いの欠点を補い合う組み合わせが理想なんですよね。彼女は外見は美しい女性なんですが、内面は男っぽい人なんです。受け身と言うより、自分から攻める感じですね。

そこで、相手の男性として理想的なのは、内面が女っぽい人ですね。そう考えると、この飯沼さんって人は理想的なんですよ。知的で理論的なんですが、細やかな感情の持ち主で自己主張はしません。

空気を読んで相手に合わせる事が出来ます。生活感があると言いますかね。彼女がどちらかと言うと、家庭よりも仕事で輝ける人で、彼女が仕事を辞めるのはもったいないですね」

「もったいない」と言う言葉に、マネージャーの間宮は頷いた。

「こういう女性に対しては、男っぽい男性だとぶつかってしまうんですね。彼女は否定される事が何より嫌ですから」
「確かに」

「その点、彼は精神年齢が高いので、彼女の我がままを許せると言いますか、理論的でありながら感受性も鋭いので、彼女が何を望んでいるのかを察知できる人なんです。おそらく彼は、演技をするにしても、演出家や監督の求める事や共演者の求める事も敏感に察知する人なので、とても重宝されていると思うんですね」
「なるほど」

「彼に足りないのは強い運ですが、彼女がそれを持っています。彼女に足りないのは強すぎるパワーをコントロールする力ですが、それを彼が持っているのです。

結論を申し上げると、お二人はとても良い組み合わせで、一緒になる事はお二人のためでもあり、お互いの事務所にも利益をもたらすと言えるでしょう」

確信を持って力強く言い切る零美の言葉を聞き、間宮は右手を胸に当てて小さく息を吐いた。その様子から、緊張から解き放たれて気が楽になった事が見て取れた。

すっかり安心した彼女は、「ありがとうございます」と何度も頭を下げ、意気揚々とした面持ちで帰っていった。

夕食時、和彦と一緒にテレビを観ていると、新井みずきがCMに出ていた。口に入れたご飯を飲み込んだ後、零美は和彦に言った。

「彼女ねえ、近々結婚発表するかもよ」
「えっ!? どうして?」

理由を尋ねる和彦をよそに、零美はテレビを観ながら、一人でほくそ笑んでいた。

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