第九話「鏡のような女」

その人は、透き通るような肌に長い髪、モデルかと思うほどの高身長なのにかなりの細身で、さらには白いワンピースを着ていて、どこか人形のような女性だった。
はにかみ屋らしく、ソファーに座っていても落ち着かず、どこかもじもじしていた。

「お名前は、水島静江さんですね。今日はどんなお悩みですか?」
「はい…。あのう……今の仕事を辞めようかどうしようか、悩んでいまして…」

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「どんなお仕事をなさっているんですか?」
「アクセサリー販売の会社で事務をやっています」

「なるほど。えーっとですね、水島さんの命式を見ると、特徴的なのが、とても感受性が強いって事なんですね」
「はい」

「人の考えている事が敏感に感じられるんです。それで、とっても疲れると思うんですよ」
「はい、ものすごく疲れます。仕事が終わって帰ってくると、グタッとしちゃうんです」

「水島さんは、環境にとても左右されてしまう人なんですよ。水ってどんな色にも染まりますよね?良い環境にいれば良い人になり、悪い環境にいれば悪く染まってしまうんです。だから、職場の環境が問題になってくるんですね」
「女性が多い職場なので、ドロドロしてるっていうか…。陰で悪口とか言ったり…。そういうのを聞いてると疲れちゃうんですよね」

はにかんだ笑いをする静江を見て、零美に彼女の緊張が伝わってきた。

「水島さんは、人混みの多い場所、スーパーとかデパートなんかは苦手じゃないですか?」
「そうですね。あんまり行きたくないです」

「水島さんのような方は、人とすれ違っただけで相手の波動の影響を受けてしまうんです。ああいう所には、いろんな人が来られますよね。辛いとか苦しいとか悲しいとか、妬ましいとか恨めしいとか、そういう悪い感情を持った人の波動に敏感に影響されてしまうんですね。だから疲れちゃうんです。
職場なんかも、そういう悪い感情を持った人が側にいれば、いつもその影響を受けているわけですから大変なんですよね」
「そうなんですか…。なるほど」

「水島さんって、とっても傷つきやすい人なんですよ。それで、傷つけられたくないから、私を傷つけないでという言動になってしまい、それで相手が傷ついてしまうのですが、その傷ついた相手を見て、自分はそれ以上に傷ついてしまうんですね。

そう、まさに鏡のような人なんです。相手によって変わるというか。相手が心を閉ざしていると、自分はそれ以上に心を閉ざしてシャッターを下ろしてしまう。逆に相手が心を開いていると、自分はそれ以上に心を開いてオープンになるんです。

どんな人が目の前にいるかで、あなたの表情が変わる、まさに鏡みたいな人なんです」
「鏡、ですか…」

「そうなんです。だから、見る人によって印象が変わるんですね」
「それはあると思いますね。誤解されやすいんです、私…」

「とにかく、今の職場は良い環境とは言えないと思います。直感が鋭い方なので、自分には合わないと敏感に感じているんです。それが体調にも影響しますからね」
「部屋の冷房が効きすぎてて…。営業の人が外回りしてきて『暑い暑い』って冷房強くするんですよ。それがまた辛いって言うか…」

「もともとお体が冷えやすい方ですもんね。出来るだけ体を冷やさないようにしないといけませんよね。腎機能、婦人科系が弱い方なので、出来るだけ冷えを貯め込まないようにしたいですね。出来れば、体を温める食材を摂るようにしたいですね」
「体を温めるというと、どんな食べ物が良いんですか?」

「根の物、根菜類ですね。地中に埋まっている芋とか大根、ニンジン、ゴボウなどなど。太陽から遠ければ遠いほど体を温めてくれます。逆に、太陽に近くなればなるほど、体を冷やすわけですね。
また、黒い物は腎臓に良いです。黒豆、黒ゴマ、ひじきとか。黒い食べ物は腎臓を養ってくれます。
お若いですから、将来結婚して出産という事も考えて、今のうちに養生しておくのも大事だと思います」
「そうなんですね。確かに、体が冷えていると妊娠しづらいと聞きます」

「それで、仕事の件ですが、あなたの直感に従った方が良いかと思います。辞めたいなあという方向で、もう考えが固まっているように感じるのですが…」
「はい…。そうなんです。もう、心の中では辞めたいと思っているんです。でも、今の会社を辞めて、次に良い所が見つかるかなあという思いもあったりして…。なかなか行動に移せないんですね」

「なるほど、そうですよね。それが心配なのは当然の事です。
ところで、水島さんは夢とかありませんか? やりたい事とか」
「夢ですか? 特に…思い浮かばない…」

「でしたら、中学生ぐらいの頃になりたかった職業とか、憧れだった職業は何ですか?」
「中学生ぐらいの頃ですか? うーん、そうですねえ…。本を読むのが好きで、小説家になりたいなとは思っていました」

「小説家ですか。どんなジャンルが好きなんですか?」
「そうですねえ…。推理小説とか、ミステリー系ですかねえ…」

「いいですねえ。私もミステリー大好きです。中学生ぐらいの頃の夢が、一番その人がなりたいと思っている夢なんですよ。
高校生以上になると、もう自分の限界が見えてしまって、現実的な選択をしてしまうんですよね。だから、中学生ぐらいの頃の夢が一番なりたいものなんです。

水島さんは、言葉に対する感性が優れているし、表現者というタイプですから、小説家は向いていると思いますよ」
「そうなんですか。嬉しいです、そう言ってもらえると」

「とにかく、環境で左右される人なので、今の職場環境では、せっかくの才能が活かされないかもですよね」
「そうだと思います」

「とりあえず今の仕事を続けながら、次の仕事を探していくのはいかがでしょうか?」
「そうですね」

「そうしながら、小説も書き始めたら良いと思いますよ。今は、ネットで自分の作品を投稿できますし、それが書籍化されたりするかも知れませんしね」
「そうなったらいいですね。ありがとうございます。頑張ってみます」

ニッコリと笑う彼女の顔は、最初の頃の緊張していたそれとは随分と変わっていた。
そして、零美は心の中で、自分も小説を書いてみようかな、と思っていた。

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