第95話「母と上手くいかない娘」

「こんばんは」と言ってドアを開けて入ってきたのは、二十代の若い女性だった。髪はショートでメガネをかけ、顔も体型も丸くて親しみやすい印象だった。一方で、メガネの奥の瞳から、意思の強そうな内面が見て取れた。

「ご予約の神田美紀様ですよね?」と声を掛けると、「はい。よろしくお願いします」と頭を下げた。テーブル席に誘導し、コーヒーの準備をしながらカウンター越しに言った。

「電話では、お母さんの事が気になるって言ってましたよね?」
「はい。母と私を観てもらいたいんです」
「それでは、その紙に、お二人のお名前と生年月日を書いていただけませんか?」
「はい」
「生まれた時刻までわかりますか?」
「私はわかります。母は、はっきりとした時間はわかりませんが、朝早かったと聞いています」
「わかりました」

彼女の書いたものを元に二人の命式を出し、プリントアウトしてテーブルに並べた。思った通り、彼女は自我が強い人で、母親によく似ていた。

「お母さんと神田さんは良く似ていますね」
「ええっ? そうですか?」
「お二人とも水の生まれですし、自我が強い所も似ています」
「自我が強いと言うと、わがままって事ですかね?」
「まあ、そうとも言えます」

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自我が強いと言う表現は良いのか悪いのか、零美は時々悩む。自己中心的と言いたい所なのだが、本人が自覚していなければただの悪口になってしまう。わがままだと自分で言ってもらうと、正直とても助かるのだ。

「確かに、言いたい事言い合って、よくケンカしています」
「今は実家でお住まいですか?」
「はい。母一人子一人の母子家庭です」
「お父さんは?」
「私が小さい頃に離婚しました」
「では、お母さんは再婚はしなかったんですか?」
「そうですね。お父さんで結婚は懲りたって言ってました」

父親の命式も知りたい所だが、おそらくは金銭的にルーズの人のような感じがした。ギャンブルなどによる金遣いの荒さから、借金でも作って離婚したのではないかという感じに思えた。ただそう感じただけで実際は違うかも知れないが、あえて詳細は聞かない事にした。

「お母さんも神田さんも真面目ですよね」
「そうですかね?」
「はい。正義感が強くて責任感が強いです。だから、お父さんが許せなかったのではないでしょうか?」
「父は、パチンコで借金作って大変だったらしいです」

ギャンブルで借金を作ったというのは想像通りだった。しっかりした女性ほど、ルーズな男と一緒になっているケースが多いようだ。私が側にいてあげないとダメなんだ、と思ってしまうのかも知れない。

自我が強い人は、自分に自信を持っている人が多い。自分こそ正しいと思っている。他の人には無理でも、自分なら出来るという過信が、ダメな男に引っかかる理由なのかも知れない。

「お母さんのいろんな所が気に入らないわけですよね?」
「はい」
「相手の欠点が気に入らないのは、自分も同じものを持っているからなんです。自分の嫌な部分を見ているようで腹が立ってくるんですね」
「なるほど」
「逆に、相手の長所と思える所は、やはり自分も同じものを持っていると言えます」
「そうですね。そう考えると、確かに母とよく似ていますね」
「ですから、気をつけたいのは、ルーズな男に引っかかりやすい……」
「そうですか……。やっぱり」
「思い当たる所、ありますか?」
「はい。今まで付き合ってきた男がみんな……」

がっくりと肩を落としてうなだれた。今まで出会った男たちが、みんな父親のようなタイプだったのだろうか。自分も母と同じ道を歩むのかも知れないと思うと、希望を持てなくなったのか。これは彼女にとって、良くない思い込みになってしまう。

占い師として気をつけるべき事は、何気なく言った言葉がその人の人生に影響を与えてしまう事だ。零美は激しく後悔した。口から出てしまった言葉を、もう一度口の中に引っ込める事は出来ない。どうすれば彼女にとって有益な言葉を伝えられるのか、頭の中で言葉が高速で飛び交っていた。

「自分が真面目だから、ちょっと不真面目な人に惹かれる傾向にあるのかも知れません。でも、恋愛と結婚は違いますから、生涯の伴侶にするなら真面目な方が良いですよね」
「そうですね。」
「見た目が真面目そうでも、中身が違う場合もありますから」
「はい。それはよくわかります」
「今は、気になる方はいらっしゃるんですか?」
「はい。まあ、何人かは……」
「その人たちの生年月日はわかりますか?」
「いえ、聞いた事がないです」
「もしわかれば、その人がどんな人かが大体わかりますし、神田さんとの相性も観る事が出来ますから」
「わかりました。その時はまた、連絡させていただきます」

そう言った彼女は、料金を支払って笑顔で帰っていった。果たして今度来る時は、どんな男性との相性を観る事になるのか。出来れば真面目な男性であってほしいと願うばかりだった。

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