第30話「俳優の熱愛が許せない女」

都内のとある焼き肉店に、楽しく談笑する男女がいた。多くの連続ドラマに出演し、今や人気絶頂の若手俳優の青山瞬と、三十歳を越えてもその美貌に衰えを感じさせない、美人女優の深津梨華だった。

二人は終始仲睦まじい様子で、食事を終えた後は深津の高級マンションに揃って入っていった。その様子は一部始終をカメラに収められて、特ダネとしてマスコミに報道された。

日本全国に駆け巡ったこのニュースは、多くの彼らのファンを失望させた。特に、青山の熱狂的なファンである神代慶子は、「裏切られた」と苦々しい気持ちを抱えていた。

 青山が無名の頃から応援してきた慶子は、今の人気はファンが支えてきたからだと言う思いが強かった。誰よりも青山の事を熱烈に愛してきたと言う自負がある恵子にとって、これは青山の裏切りであり、深津の横暴としか思えなかった。

 どうにも怒りが収まらない慶子は、知人から話を聞いていた零美の店にやってきた。

「お電話頂いた、神代慶子さんですね。お待ちしていました」
「よろしくお願いします」

意思の強そうな目つきの慶子を見た瞬間、零美は、彼女が感受性の強そうなタイプだと感じていた。とりあえず、席に着いてもらい、コーヒーを用意して彼女に出した。

「今日はどのようなご相談でしょうか?」
「先生は、青山瞬をご存知ですか?」
「はい。今やすごい人気ですよね。ドラマや映画、CMで見ない日はない感じです」
「その青山瞬と深津梨華の熱愛報道をご存知ですか?」
「はい。すごいですよね、美男美女のカップルで」
「先生、私、許せないんですよ」
「許せないって、どういう事ですか?」
「絶対、青山君が年上の深津に騙されているんですよ。二人の相性を調べてほしいんです」
「そうなんですか……。わかりました。少しお待ちください」

零美は、青山と深津の生年月日をインターネットで調べた。そして二人の命式を割り出してテーブルに並べた。

「えーっと、確かにおっしゃる通り、深津さんが九歳も年上なんですね」
「はい。二十三歳と三十二歳です。おかしいでしょ? 三十過ぎた女が、二十代前半の男をたぶらかすなんて」
「たぶらかしたかどうかはわかりませんが」
「いえ、たぶらかしているんです」

慶子は目を吊り上げ、強い口調で言った。その迫力に、零美は一瞬たじろいだ。

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「どうですか? この深津って女。悪い女でしょ?」
「何をもって悪いとするかはわかりませんが。でも確かに、この方は女性としては強い方ですね。芸能界で長年やっていくためには、このくらいの強さが必要なのでしょう」
「青山君の方はどうですか?」
「そうですね。彼は優しいと言うか、男性としての迫力には欠けますね」
「そうでしょ。彼女に一方的に誘惑されたんですよ」
「そうなんですか? それは私にはわかりませんが」
「証拠はあるんです!」

慶子はさらに語気を強めた。顔には怒りの表情を浮かべている。そして彼女は、バッグからノートパソコンを取り出した。

 零美が不思議そうに見ていると、パソコンのデスクトップ画面にあるフォルダーを開いた。そこには、いくつかの音声データがあった。慶子は、その一つを再生してみせた。

「こ、これは?」

それは、青山瞬と深津梨華の会話だった。まさに彼女が言うように、年上で先輩の深津梨華が、年下で後輩の青山瞬を誘惑している場面だった。

「そうです。まさにこれが、深津梨華が青山君を誘惑している決定的な証拠です」

慶子は、自信満々の笑みを浮かべていた。

「この音声データはどうやって手に入れたんですか?」
「それは申し上げられません」
「もしかして……盗聴、ですか?」
「そんな事したら犯罪です。これは、ある特別なルートから入手したものです」

おそらく、彼女が盗聴器を仕掛けたものだろうと零美は思った。しかし、本人が否定しているのに、これ以上詮索する事は出来ない。自分は警察ではないし、鑑定で知り得た情報は守秘義務がある。

もし、警察などに話した事が知れた時に、どんな報復をされるかわからない。そのような怖さと言うか狂気じみたものを感じる。

しかし、何故彼女がこの音声データを聞かせたのか、その理由がわからなかった。そう思いながら慶子の顔を見ると、不敵な笑みを浮かべている。

どうして笑っているのか、零美にはどう考えても理解出来ない。気のせいか、さっきから店内の温度が冷えてきたような気がする。底知れぬ怖さを感じ、心臓が冷えてくる。

「えーっと、あのですね……」
「はい」
「私が思いますに、この二人は長続きはしないなあと思います」
「ああ、そうですか」
「きっと、すぐに熱も冷めて別れると思いますよ」
「そうですか」
「はい。ですから、そんなに心配はいらないんじゃないですかね」
「それは良かった。ありがとうございます」

一応の収まりをつけ、彼女も納得したようで帰っていった。胸を撫で下ろした零美だったが、あの氷のように冷たい目が、しばらく頭から離れなかった。

後日、ワイドショーで、青山瞬と深津梨華の破局が報じられた。図らずも零美の言った通りになった。しかし、どうしても零美には、あの神代慶子の仕業ではないかと思えて仕方がなかった。

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