第6話「彼の将来性が気になる女」

平日の夕方に店を訪れたのは、身長の割には少し横に広がった女性だった。年齢は二十代後半から三十前後に見える。少しだけ太めの二の腕が、力強さと逞しさを表していた。

目、鼻、口、それぞれのパーツは整っているのだが、顎のラインまで丸みを帯びた顔のおかげで魅力が半減していた。しかし、少し肉感的な方が男性は好むのだろうと、零美は思った。

「こんばんは。電話で予約しています栗城まなみです」
「どうもお待ちしておりました。あちらへお座りください」

彼女は会釈をした後、手で示されたテーブルに向かった。足首の太さが目についたが、事務職で浮腫んでいるのだろうと思いやった。終始ニコニコと微笑みながら歩く姿に、何となく好感が持てた。

「ホットコーヒーでよろしいでしょうか?」
「はい」

零れんばかりの笑顔が嬉しい。こういう女性は男性にモテそうだ。笑顔は最高のおもてなしである。丸みがかった顔だけに、角ばった人よりも柔らかみが感じられる。心の様子が外見に現れる。彼女に悩みなどあるのだろうか、と零美は思った。

「お待たせいたしました」
「ありがとうございます」

コーヒーを差し出すと、軽く頭を下げて笑顔を投げかけた。くるんと上を向いたまつ毛が、大きな瞳を更に大きくしている。また、ぷるんと膨らんだ厚みのある唇が色っぽい。

最も男性の視線が注がれるのは、目よりも唇だと言われるが、世の男性の多くは彼女を魅力的だと思うのだろう。

「栗城さんのお知りになりたい事は何ですか?」
「実は、三年前から付き合っている彼との結婚を考えているのですが、二人の相性はどうなのかなと思いまして」
「では、お二人のお名前と生年月日をこの紙に書いてもらえますか?」
「わかりました」

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彼の名前は鈴木竜平、彼女より二歳上の三十歳である。二人の命式を割り出した後、プリントアウトして彼女の前に並べて置いた。

「これがお二人の命式になります」
「はい」
「彼は木の生まれで栗城さんは火の生まれですから、木が火を助け起こす関係で良いですね」
「そうですか。良かった」

思わず笑みが零れた。本人がいくら相性が良いと思っていても、やはりどこか不安は必ずある。第三者である占い師に言ってもらう事で、随分と安心感が増すものである。

「彼はあなたに尽くしてあげたいし、あなたは彼から尽くされても、全然負担に思わない。一緒に居て、とても楽な関係なのです」
「なるほど。確かにそうだと思います」
「あなたがいつも明るく居られるのは、彼が火の材料である木材を与えてくれているからです」
「そうなんですか。有り難い事ですね」

彼女は何度も頭を上下させて納得していた。

「ところで先生、彼は将来、お金持ちになれるでしょうか?」

経済観念が強い生まれの彼女にしてみれば、当然の関心事である。お金はないよりも、あった方が良いに決まっている。

「彼は残念ながら、本人には財運がそんなにないんですよ。ただ、あなたが一緒に居れば変わってくるんですけどね」
「そうなんですか?」
「はい。あなたは強力な財運を持っています。彼は知恵や行動力はあるのですが、残念ながら財運に恵まれていません。ですから、彼にとってあなたは、絶対的に必要なパートナーです」
「えー、じゃあ、私が彼の命運を握っていると?」
「はい。そう言う事になります」

えへへへ、と恥ずかしそうに頭をかきながら笑った。

「彼はですね、否定に弱いですから、ポジティブな言葉かけが必要ですよ」
「はい」
「大きな大木に育てるためには、適度な太陽、水、良質な土壌が必要です。良い言葉は彼を育て、悪い言葉は枯らしてしまうのです」
「なるほど」
「金の成る木に育てたければ、それ相応に手をかけてあげないといけませんよね」
「金の成る木って良いですね」

その言葉が気に入ったようだ。お金と言う言葉が大好きな彼女には、わかりやすくてインパクトのある表現だった。時に占い師は、本人が意識しない言葉を話す事がある。

それはまさに「でまかせ」なのだが、「でまかせ」とは、出るに任せる「出任せ」となる。口から出るに任せる言葉、それが本人の言葉ではないとすれば、神からの託宣だろうか。それは、神が相談者に伝えたい内容を、占い師の口を用いて語る、と言う事なのだろう。

「つまり、彼がお金持ちになるかどうかは、あなた次第だと言うわけです」
「ひゃー、私って責任重大ですね」
「そうです。彼に十分な太陽と水と良質な土壌を与え続けてください。そうすれば、あなたの望む通りになるはずです」
「わかりました」

彼女の大きな瞳は、未来の希望を見据えて輝いていた。自分はとんだ当たりくじを引いたのかも知れないと、興奮を抑えきれない様子が見て取れた。

しかし、占いなど、当たるも八卦当たらぬも八卦である。必ずしもそうなるとは限らないものなのだ。そう付け加えたかったが、彼女の興奮ぶりを見て、零美は言葉を飲み込んだ。

彼女は火の生まれだし、わざわざ冷水をかける事もない。彼女の人生は彼女のもので、彼女自身が切り開くものなのだから。

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