芥川龍之介 小説 独自解釈「病中雑記」

引用:青空文庫 芥川龍之介「病中雑記」

 芥川龍之介先生の書いた小説「病中雑記(びょうちゅうざっき)」について考えてみたいと思います。これは大正15年2月と3月に発表されました。芥川先生は、1921年(大正10年)に大阪毎日新聞社の海外視察員として中国を訪問、その後日本に帰国して創作活動をします。中国の水や食べ物も日本人には合わなかったでしょうし、仕事としての執筆も忙しかったのでしょう。この時にかなり無理をしてしまった事が、後々の体調不良の原因になったようです。

 「或旧友へ送る手記」にも書いてある通り、自ら命を絶つ動機となった「将来に対する唯ぼんやりした不安」と言うのは、何度も繰り返す肉体的な病気が精神的な苦しみとなり「いつまで続くかわからない苦痛から逃れたい」と思うようになったのではないでしょうか。この作品は、1から12まで、それぞれ数行のメモ書きのようなものを書いた、まさに雑記です。

 毎年冬になると胃腸が弱くなり、更には神経性狭心症になって気持ちが晴れない日が多く、精神異常になる前触れを感じていました。それが一番ひどかったのは大正10年の年末でした。眠りに入ろうとすると、誰かに名前を呼ばれている気がして飛び起きる事もあったようです。黄色い光の断片が目の前に現れたりする事も度々ありました。大正11年の正月には、「顔に死相が出ている」と言われたそうです。

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 正岡子規の書いた随筆「墨汁一滴」や「病床六尺」に「脳病を病み」と書いてありますが、それは神経衰弱の事です。芥川先生は、正岡子規がそのような病気だったのに、どうして俳句を作れたのか不思議に思っています。自分自身も病気に苦しみながら作品を書いていたからでしょうか。一か月余りも不眠に悩まされ、アダリンと言う催眠鎮静剤を飲みながら「子規全集」を読んでいた芥川先生は、俳句や短歌のみならず、批評家としても素晴らしいと言っています。

 子どもの頃から虚弱体質だったと言う正岡子規が最初に吐血したのは、20歳の時でした。翌年には肺結核と診断されます。当時、結核は不治の病。死を覚悟した事でしょう。「鳴いて血を吐く」といわれるホトトギスに自らを重ね合わせ、ホトトギスの漢字表記である子規を俳号にしました。1896年には結核菌が脊椎を冒し、脊椎カリエスを発症。1899年の夏頃から34歳で亡くなるまでは、ほぼ寝たきりの状態。そんな中でも、俳句や短歌、随筆を書き続けたそうです。

 子規が亡くなるまでの5か月間、日記的随筆として書かれた「病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)」。六尺は約1.8メートル、その狭い床からほとんど動けない中、毎日書き続けたものが新聞に掲載され続けました。若くして死ぬ運命にある自分自身を嘆く事なく、客観的にとらえています。

 社会や文明、森羅万象の変化に対する好奇心は衰えず、女子教育の必要性を力説。日本の将来を考えたりするなど、病床にあっても人々の心に発信し続けた子規の姿に、芥川先生はかなり勇気をもらったのではないでしょうか。それと同時に、子規のような悟りを得られない自分自身への歯がゆさなどもあったのかなと、この作品を読んで思いました。皆さんはどう思いますか?

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投稿日:2021年12月18日 更新日:

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