ミラクルタイムで現れるサンタクロースは、荒天をものともせずに急ぎ足でやってくる。
「今年もよく頑張ったね」
ねぎらいの言葉と、KISSを届けにやってくる。
「あぁ、そうだ」
思い出したように差し出した小箱に入っていたのは、蒼白く輝く冬の月のようなパールに私の誕生石の流れ星が煌めくジュエリー。
「去年のプレゼントで、元気で逢えるという願いが叶ったからね」
かじかむ指先で取りだし、もどかし気にポロリンと首にかけてくれる。
「さ、これでまた願い事が叶うよ。それから、叶えるために守る約束を三つ。無理をしない事。元気でいる事。あなたらしくいる事」
そう言ってウィンクした後、星が流れる夜空の雲行きを見上げる。お疲れなサンタクロースに、少しだけ甘いものをと用意した小さなチョコとクッキーを差し出す。
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「ありがとう。おいしいよ。誰かの次だと思うけど」
そう言ってお茶目に笑う。
「あちこちでつまみぐいしていませんかぁ?」
「サンタはとっても偏食だって知らなかったのかい?」
『誰か』が気になることを悟られまいとさりげなく聞いたつもりが、やり返されてしまった。
「今年もあと少しだね」
そう言って、穏やかな色をたたえる瞳を覗き込むと、だめだ、泣きそうになる。
「泣かなくてもいい。サンタクロースは、時間も距離も超越するんだ。心配しないで」
頭をポンポンと撫でながら視線を外し、白い息を吐きながら夜空に向かって囁く。
「どんなに大人になっても、頭を撫でられてHUGされると嬉しいものだから、こんな時ぐらい素直でいなさい」
そう言って微笑む。私の胸元の願い星は、ずっと光り輝いている。
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