芥川龍之介 小説 独自解釈「南瓜」

引用:青空文庫 芥川龍之介「南瓜」

 芥川龍之介先生の書いた小説「南瓜(かぼちゃ)」について考えてみたいと思います。時代はおそらく江戸時代かなあと思います。最初から最後まで一人語りになっています。ある人が、目の前の友人に対して「南瓜の市兵衛(いちべえ)」について話をしている場面です。

 「何しろ南瓜が人を殺す世の中なんだから、驚くよ」と言って話を切り出します。南瓜と言うのはあだ名で、吉原で太鼓持ちをしている「南瓜の市兵衛(いちべえ)」の事です。太鼓持ちと言いますのは、酒の席で小噺(こばなし)や踊り、物真似などを披露したり、客の話に付き合ったり、酒やゲームの相手もします。基本的に男性の仕事で、女性の芸者に対して「男芸者」と呼ぶ事もあります。

 彼が言うには、南瓜には何一つ、芸らしい芸がない。ただ客をつかまえて洒落(しゃれ)を言うだけのようです。そんな南瓜も、たまには真面目な事を言う時もあるのですが、客はやっぱり腹を抱えて笑ってしまう。客を喜ばせるのが仕事なのだから、それで良いと思うのですが、南瓜にしてみたら真面目な事を言っているのに笑われてしまうのが面白くない。そんな不満をずっと前から持ち続けていました。

 南瓜は、薄雲太夫(うすぐもだいふ)と言う花魁(おいらん)に惚れていました。そして、奈良茂(ならも)と言う成金の客も、彼女に惚れていたようです。南瓜が悔しかったのは、自分が薄雲太夫に惚れているのは本当の事なのに、いつもの冗談としか受け取ってもらえなかった事です。彼女だけでなく、周りの人もみんな真に受けてはいませんでした。それを苦にしての人殺しでした。

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 ある晩、南瓜は酒に酔っぱらって薄雲太夫の傍に行き、夫婦になってくれとせまりました、しかし、いつもの冗談だと思い、笑ってばかりで相手にしてもらえません。そればかりか彼女が「市兵衛(いちべえ)さん、お前、わちきに惚れるなら、命がけで惚れなまし」と言ったそうです。

 そして成金の奈良茂(ならも)が「こうなると、《われ》と《おれ》とは、かたき同志や。今が今でも、命のやりとり、してこまそ」と言いました。彼女に言われた「命がけ」と、奈良茂に言われた「命のやりとり」と言う言葉が、南瓜の心に響きました。

 南瓜は座りなおすと、彼女に向かって英語でハムレットの真似をしました。周りにいた人たちは英語なんて全くわかりませんでしたが、アメリカで皿洗いをしていたと言う奈良茂だけは、英語がわかったようです。彼は南瓜に対して同じようにハムレットの台詞を言いました。

 彼の英語の台詞を聞き、南瓜は青ざめました。自分だけしか知らないと思っていたハムレットの台詞を、恋仇の成金が話している。この時、彼の脳裏には「命がけ」「命のやりとり」と言う言葉が浮かんだに違いありません。そして意を決した南瓜は、成金のそばにあった脇差(わきざし)の刀を抜いて、彼の胸に突き刺しました。

 そのまま、成金の客は絶命。「見やがれ。俺だって出たらめばかりは言やしねえ」脇差を放り投げた南瓜は得意げに言いました。その態度はまるで別人です。それまでは下の下に見られていた南瓜ですが、その場にいた人たちには、確かに別人に見えたようです。南瓜が役人につかまって連れて行かれる時には、それまでとは違う綺麗な羽織を着ていました。それは薄雲太夫のものです。言われた通り「命がけ」の覚悟を見せた彼に対する、彼女からのプレゼントなのでしょう。

 普段はふざけていても、真面目になる時もある。この場にいた誰もが、南瓜がこんな事をするなんて想像もしていなかったでしょう。彼がずっと心の中で不満を抱えていた事を知る人はいませんでした。現実世界でもよく、事件が起きると「まさかあの人が」なんて言葉をよく聞きます。あまり不満は溜め込まない方が良いと言う事でしょうか? 皆さんはどう思いますか?

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