ねえ、眠れないの? 困ったなあ。じゃあさ、眠くなるように昔話してあげるね。
むかしむかし、あるところに、竹取りのおじいさんとおばあさんがいました。竹取りのおじいさん? おじいさんは竹を取るのが仕事なんだね。竹を取って、その後どうするんだろう? どこか町に出て、売りにいくんだろうか?
その竹は、長いまま持っていくのか、それとも短く切って持っていくのかな? 物干し竿(ざお)に使うとなると、長いまま持っていかないといけないよね。この当時は、車なんてなかったから、ずるずると引きずっていったのかなあ。結構大変だったのかも。あんな長いものを引きずられても、すれ違う人は迷惑だよね。
「あのじいさん、また竹を引きずってきた」なんて、陰口言われてたんじゃないのかな。一本だけ持っていっても大したお金にならないだろうから、何本か持っていくんだろうね。一度に何本持てたんだろう? 太い竹となると、結構な重さになると思うんだけどね。
おそらくその竹を、肩に担いで、だけどやっぱり、引きずりながら歩いていったんじゃないかな。たぶん、いろんな奥さん方から、「おじいさん、今度は、直径何センチの、長さ何メートルの竹を持ってきてよ」なーんて注文されて、「はい、今度持ってきます」とか言っちゃって。
その注文通りの竹を探すのがまた、大変だったんじゃないかな。その頃、定規があったかどうかわからないけど、定規の代わりにヒモかなんか持ってたりして、そのヒモで直径を測ったり、長さを測ったりしていたんじゃない? あるいは、三十センチくらいの棒があったのかも。
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その棒を腰に差したりして、武士みたいな感じで歩いていたのかもね。山道なんか登る時には、杖の代わりにもなるしね。杖の代わりにするんだったら、三十センチは短いから、一メートルはあったのかも知れない。でも、一メートルだと、腰に差すと邪魔だね。これまた、引きずって歩いていたのかも。
じゃあ、おばあさんは何をしていたんだろう? 川へ洗濯に行ったら桃太郎になっちゃうし。やっぱり、竹取りの女房だったら、竹を使った内職をしていたんだと思う。竹を使ってカゴを作ったり、ちょっとした土産物(みやげもの)を作って、それもまた売りに行ったんじゃないかな。
もしかしたら、おばあさんの作る竹細工の評判が全国に知れ渡っていて、「あのおばあさんの弟子になりたい」と、大勢のお弟子さんが集まってきていたかも知れないね。おじいさんおばあさんが住む隣りに、お弟子さんたちの住む家もあったりして。
もしかしたら、おじいさんが知らないうちに、おばあさんが弟子の一人と良い仲になったりして。でももしかしたら、その中には女性のお弟子さんもいるだろうから、その女性とおじいさんが良い仲になっていた、なーんて事もあったかも知れない。こうなるともう、昔話じゃなくて昼ドラの世界になっちゃう。
横道に大きくそれちゃったから、かぐや姫のお話に戻るね。ある日おじいさんは、山で光っている竹を見つけるんだけど、ここがポイントだと思うんだよ。光っていたから見つけられた。光っていなかったら、見つけられる事もなく、かぐや姫は死ぬまで竹の中にいなきゃならない。これ、すごく恐ろしい話だと思わない?
どういう細工で光らせていたのかわからないけど、もし何かの手違いで光らなかったとしたら、おじいさんはかぐや姫がいるのも知らずに「えいやー!」って切っちゃったかも知れないよね。ちょうど、かぐや姫がいる節(ふし)のところを切る時、頭の上を切ればいいけどさ。
あらかじめおじいさんに、そんな事知らせてないからね。「この竹の中には女の子がいますから、この辺りをうまーく切ってくださいね」なんて、バラエティーのやらせみたいに言われればわかるけどさ、誰からも知らされないで、よくもまあ、かぐや姫を傷つけずに竹を切ったよなあ、なんて、感心しない?
まあ、そんな神業(かみわざ)を持ったおじいさんに見つけられなかったら、かぐや姫は月には帰れなかったんだよねえ。どう? 眠くなった? それは良かった。じゃあ、おやすみなさい。
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