芥川龍之介 小説 独自解釈「食物として」

引用:青空文庫 芥川龍之介「食物として」

 芥川龍之介先生の書いた随筆「食物(しょくもつ)として」について考えてみたいと思います。「金沢の方言によれば「うまそうな」と言うのは「肥(ふと)った」と言うことである」と言う書き出しで始まります。これは、2学年年上の室生犀星(むろう・さいせい)が石川県金沢市出身だからです。

 室生犀星と芥川先生の出会いは、1918年(大正7年)1月です。2月に結婚した後に上京した室生犀星は、東京都北区田端に新居を構えます。同じく田端に住んでいた芥川先生とは「俳句を語り合う“俳友”であり、骨董品を愛する“壺友”」で親密な関係になります。

 「例えば肥(ふと)った人を見ると、あの人はうまそうな人だなどとも言うらしい」と書いています。これは、室生犀星が芥川先生に教えた方言でしょうか。この言葉が気に入ったようで、この方言を思い出すたびに、友達を、食物(しょくもつ)として見るようになったそうです。

 「里見弴(さとみ・とん)君などは、皮造(かわづく)りの刺身にしたらば、きっと、うまいのに違いない」と言っています。「皮造り」とは、魚の皮が持つ“旨味”や“美しさ”を活かす手法で、“鯛”“ひらめ”“かつお”“さば”“こち”“さわら”などで多く使われます。里見弴の容姿が男前だったからかも知れません。

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 「菊池君も、あの鼻などをしいたけと一緒に煮てくえば、脂《あぶら》ぎっていて、うまいだろう」と言いますのは、菊池寛の事でしょう。鼻の形が特徴的だったのでしょう。

 「谷崎潤一郎君は西洋酒で煮てくえば飛び切りに、うまいことは確かである」と言っています。この場合の西洋酒はビールの事でしょうか。ビールで煮る事によって柔らかく仕上がるのでしょう。

 「北原白秋君のビフテキも、やはり、うまいのに違いない」「宇野浩二君はロースト・ビーフに適している」「佐佐木茂索(ささき・もさく)君は、串(くし)に通して、しらやきにするのに適している」など、どのような根拠があるのかはわかりませんが、芥川先生独特の感性なのでしょう。

 最後に、室生犀星の事をこう言っています。「室生犀星君は、干物(ひもの)にして食うより仕方がない」と。干物は、魚介類の水分を乾燥によって減らすことで、貯蔵可能なように加工した食品の事です。干して乾燥することで、独特の食感と食味が生まれ、蛋白質が分解されて旨味が形成されます。室生犀星は腐りやすいと言う事なのでしょうか。

 室生犀星と芥川先生の絆の深さを感じる文章でした。

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