綿毛

 開け放した窓辺から、緩やかな柔らかい風が吹き込んだ。

「どこにも行かないのも、のんびりしていいね」
「あとで、どっかにいけば良かったって言わない?」
「言わないよ」

 遠くでバイクの音がする。

「なぁ。ここに」

 そう言って、座布団をポンポンと叩く。

「ん?」
「おいで…」

 そっぽを向いて、鳥のさえずりで消えそうな小さな声で言う。

「して」

 耳かき棒を差し出す。

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「あ。綿棒の方がいいんだよ」
「いいの。して」

 背中を向けて横たわる

「俺、好きなの。耳かき。忘れた?」
「知ってるけど」

「クッションとってくるね」

 返事がない。

「やだ。ひ・ざ・ま・く・ら」
「やりづらいよ」

 返事がない。

「見えないのになー」

 大きな声で言うと、むっとした顔でむくれて言う。

「少しだけ、こちょこちょってして」

 いつも強気なのでカワイイと思ってしまう。
 負けた。

 綿毛(わたげ)でこしょこしょするとくしゃみをした。

「うわ! 危な」

 鼻をすすりながら、大袈裟にため息をついて言う。

「なんでジーンズなんだよぉ。今日」
「私の勝手でしょう」
「膝小僧さわさわしたかったんだよぉ」

 そう言いながら、ジーンズの膝にぐるぐると円を描く。

「なんちゃらハラスメントって言われるぞー」
「じゃぁさ。ふぅふぅはーして」

 くすぐったくて笑いながら言うこちらの言葉は無視。

「はいはい」

 耳に優しく息を吹きかける。

「おーしーまい!」

 あら? 寝息をたてている。狸寝入りかな?と思いつつ、少しそのままでいた。

「ご褒美時間、ありがとな」

 小鳥のさえずりに消え入りそうな声で言った。

 何かがこみあげてくる。風がタンポポの綿毛を連れてきた。

 彼の背中をゆっくり優しくさすった。そんな春の午後。

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