大人のハロウィンデート〜カナ&ショウタseason.3〜

 町中がオレンジ色に染まるこの時期。空気もひんやりとして恋人たちが肩を寄せあって歩いている。(くっつくにはちょうどいい口実ね♪)

 微笑ましい光景を見ながらショウタのカオがよぎる。

 「今年はちょうど日曜日だし…会いたいな。」

 付き合ってるのに、なぜか遠慮してしまう。たまには1人で過ごしたいかも?友達とパーティーするかもしれないし…。相手の時間を拘束するようで、あまり自分から会いたいとは切り出せない。

 「もしもしショウタ? 日曜日なんだけど…。少しでも時間があれば会いたいなぁなんて…。予定があるならいいんだけどね。」
 「僕もカナさんに会いたいなって思ってました。だけど雨なんですよね…。どうしましょうか?」

 ショウタはドライブが大好きでいつもデートは公園や湖、自然がたくさんあるところに行く。毎日、都会の雑踏に身をおいてると、ストレスが溜まるものね。

 「たまにはおうちデートがしたいな。それとも何処か行きたいところある?」
 「いいですね。僕、カナさんとやりたいことがあるんです。」
 「なになに!? どんなこと? 私にもできるかな?」
 「何をするかはそれまで内緒です。僕の言う通りにしてくれれば大丈夫です。」

 私はかなりの不器用だけどできるだろうか。ジャマにならなきゃいいけど…。でもちょっとドキドキで楽しみ♪ 初めて一緒に過ごすハロウィン。仮装するショウタ…んー想像できない。

 〜ハロウィン当日〜

 「よし! できたぁ」

 朝からカボチャと取っ組みあって、なんとかキッシュとスープ、それにメインのカボチャsweetsを完成させた。甘いものがニガテなショウタでも食べられるように、砂糖は使わずに作ってみたけど。

 「ぅん♪ これなら大丈夫でしょ!」

 玄関チャイムが鳴る。

 「おかえり♪」

 一緒に住んではいないけど部屋で過ごす時はお約束のあいさつ。

 「お腹すいたでしょ。いま支度するからゆっくりしててね。」
 「カナさん。前に言った僕のやりたい事、手伝ってもらっていいですか?」
 「ぅん♪ もちろん。」
 「これ作りたいんです。今日はハロウィンだから♪」
 「キャンドルね。ジェルだから中のカボチャやオバケが見えて可愛いかも♪」

 良かった。これならお手伝いできそう。

 「カボチャもオバケももちろん入れますが、このプレートも。記念になるでしょwww」
 「✴︎2021.10.31 カナ♡ショウタ✴︎ ぅん♪ いいかも。」

 意外とロマンチックなのね♪ もしかしてお姉さん達に相談したのかな。

 「ん? どうかしました?」
 「なんでもないよ♪ さてと取りかかりますか。まずは…」

 グラスにカラーサンドを重ねて、その上にガラス細工のカボチャ、オバケ、そして、プレートを可愛く置いて芯を真ん中に固定したらジェルを流し入れて固まったら完成である。

 「よし!出来た♪」
 「プレート入れるとやっぱりステキね♡ カボチャ達も可愛い。」
 「さすがに、お腹すきましたねw」
 「夢中になってたからあんまり感じなかったのねw」

 顔を見合わせて微笑んだ。

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 「はいっ。ではお待ちかね! カボチャのフルコース♪」
 「わ〜おいしそぉ。キッシュとスープそれにデザートはプリンとプチシューですね♪」
 「私だって、いざとなれば出来るのよ。ショウタ甘いものニガテでしょ? だからカボチャの甘さだけで作ってみたの。どぉかな?」
 「ぅん♪ とってもおいしいです。カナさんの気合い! 伝わりましたw」

 食事も終わり、少しだけお酒を飲みながら一緒に作ったキャンドルを灯す。

 「カナさん。いつも思ってたんですが…僕に遠慮してませんか? 言いたいことガマンしてるでしょ。」

 寂しそうな顔でショウタが見つめている。

 「…そんなことは…。」
 「僕ってそんなに頼りないのかな…。」

 そっとつぶやく。そんなふうに思わせてたなんて…

 「ご、ごめん! 違うの! ショウタは頼よりになるし、やさしいし、大好き。ホントは 毎日でも会いたいよ…。いつまでも過去に縛られてる私がいけないの…」

 おもいきって話すことにした。昔付き合ってたカレが、かなりのヤキモチ妬きで束縛する人だったこと。初めてのカレだったから「恋人同士ってこんなかんじなんだ」って思ってた。宅配便のお兄さんに「ご苦労様です」って言っただけで不機嫌になるし、夜、友達と飲みに行くのは絶対ゆるさない。ランチでさえも、いつ、どこで、誰と、帰宅時間、を必ず確認する。少しでも遅れると手をあげそうになる…。

 あの時は「ゴメンね! こんなに心配してくれてるのに…約束破った私が悪いよね。あなたに愛されてすごく幸せよ。」なんて思い込んでた。こんな私を必要としてくれてることが嬉しかったから、ワガママを何でもきいてた。友達に話したら「別れた方がいい。」って言われたけどまるで絶対神のようにカレを信じていた。

 そんな私に飽きたのか、一年後…やっと洗脳から解放された。あの時の恐怖と愚かさがトラウマになって、何人かとお付き合いはしてきたけど、相手の方から去って行くことが多かった。ショウタもきっと…。

 振られるのは慣れてるから大丈夫! いつもはそう思えるのに…。年上だからワガママ言っちゃダメ! カレの時間ジャマしないようにしなくちゃ。ホントは…離れたくないの。ずっとあなたのそばにいたいのよ。なんてこと言ったら、私もあの時のカレと同じになってしまう。

 なにも話せなくなってうつむいてる私をやさしく抱きしめながら言った。

 「カナさん。話してくれてありがと。」
 「ぅぅん…私こそ、不安にさせちゃってごめんね。」
 「あっ!仮装するの忘れてましたね…。もぉ遅いかぁ。来年はお揃いにしましょうね。何がいいかなぁ…」

 すっごくシャイなショウタが仮装…。ん〜やっぱり想像できないかも。

 だけどこんなにステキなハロウィンを過ごしてるの、きっと私たちだけだよね。

〜fin〜   2021.10.29.fri 作: 大河内ミュウ

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