何年か前のこと。あるとき、何故か急激に霊感が高まっていたころがあった。何がそうさせたのかは明確に思い出せないのだが、二点だけ紹介したいと思う。
友人に、自営業を営んでいる人がいた。彼は、父親が亡くなった後を継いで社長になっていたのだが、景気とともに収益も減少し、資金繰りに苦労していた。
ある日、彼が切羽詰まった声で電話してきた。
「明日までに300万円用意できないと首をくくるしかない。どうしよう?」
そのころ、何故か霊感が冴えきっていた私は、口から出るに任せて言った。
「大丈夫、心配しないで。明日の朝、ニつの紙袋を持った人があなたの会社に行きます。紙袋の中には300万円が入っているはず。もし、あなたが私の言葉を信じてくれるなら、必ずそうなります」
その頃の私は、《言った人が問題なのではなく、聞いた人がその言葉を信じることができれば、それは必ずそうなるはず》という思いに支配されていた。
Sponsered Link
次の日、彼からメールが届いた。
《今朝、○○銀行から電話があって、以前に申し込んでいた400万の融資が決まったと。なんとか首をくくらなくてよくなりました。》
「それは良かった」とメールを返信した。
私の予言は《紙袋に300万円》だったので、ちょっと違うなと思ったのだが、彼が首をくくらなくてよくなったことには素直に喜んだ。そして、《大丈夫》と言った私の言葉が嘘にならなかったことに安堵したことを覚えている。
彼からのメールがあった同じ日のこと。以前からよく来てくださっていた占いのお客さんから電話があった。
その人は、ある企業のテレフォンアポインターをしている五〇代の女性。普段から、そこそこ売り上げ成績の良い人なのだが、ここ数日間は思うような成績がとれていないという悩みだった。
かなりマイナス思考の持ち主なのだが、私は迷わずに言い切った。
「今日は大丈夫、これまで取れなかった分が今日必ず取れるので、楽しみにしていてください。あなたが信じてくれるなら、必ずそうなるはずだから。そして、結果がどうだったか、夕方に電話で教えてください」
この時は、まだ友人の300万円がどうなったのかを知らなかったので、少しドキドキしながら、それでも自信を持って断言した。
その後、友人からのメールが届いたのだ。一度だけでなく、二度の予言が当たるなら、偶然ではないはず……
その日は、ドキドキしながら夕方の電話を待っていた。五時すぎ、電話がかかってきた。
「あなたの言うとおりになった。今日は信じられないくらい取れた」
豪快に笑う彼女の声を聞きながら、私は興奮を抑えきれなかった。今、冷静になって考えてみても、あのころどうしてあんなに無謀な予言をしたのか、いまだによくわからない。
《何か見えない力》に支配されていたとしか思えないのだ。
さきほどの二つの例を、《ただの偶然》と捉えるか、《何か見えない力》によるものと捉えるか……。
《神様がいるのかいないのか》《霊界はあるのかないのか》いまだに確信のない私だが、だからこそ《奇跡をみせてほしい》という思いが強いのかも知れない。
今までも、そういう『実験』を何度もやってきているので、いずれ紹介したいと思う。
ちなみに、私の占いの師匠いわく《出まかせ》とは、口から出るに任せる『出任せ』だと。
つまり、自分の言葉ではなく、《何か見えない力》が言わせている、ということなのだろうか?
『雨の中の女 神野 守 短編集 第1巻』amazonで販売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B07FYRKPL2/
Sponsered Link