改作・昔話「三枚のお札(ふだ)」

 ねえ、眠れないの? 困ったなあ。じゃあさ、眠くなるように昔話してあげるね。

 むか~しむかし、ある寺に、和尚(おしょう)さんとやんちゃな小僧(こぞう)が暮らしていたんだって。ある日、小僧が山へ栗拾(くりひろ)いに行きたいと言いだしたの。和尚さんは、山には怖い山姥(やまんば)がいるから、この魔除けのお札(ふだ)を持っていって困った時に使え、お前の願った通りになるからと、三枚のお札を持たせる事にしたんだよね。

 小僧が栗拾いに夢中になっていると、あっという間に日が暮れちゃって、心細く思っているところへ一人のおばあさんが現れた。おばあさんは、その栗を茹(ゆ)でてあげるからって言って、自分の家に連れていったわけ。もうここまで来たらわかるよね? そう、このおばあさんが実は山姥なんだよね。

 だいたいさ、山には怖い山姥がいるって和尚さんが言ってるのに、おばあさんを見て「山姥だ!」って思わないのかね? まあ、小僧って言うくらいだから、まだ小さい子どもだったのかな。よくさ、知らない人からお菓子をもらっちゃだめだよとか、知らない人についてっちゃだめだよとか言うじゃない?

 この場合は、和尚さんが小僧に「山でおばあさんに会ったら、山姥だと思え」って、言っておかないといけないよね。そんな山奥に、おばあさんが一人で住んでいるっていうのもおかしな話だし、もしか山姥じゃなかったとしても、ちょっと変わっている可能性があるから、気をつけるように言っておくべきだったと思う。

 でもまあ、小さい子どもが、暗くなってきて、山の中で一人ぼっちになっちゃったら、「助かったー!」って安心しちゃうかも知れないね。まあ、そのための魔除けのお札を持たせているわけだけど。

 小僧はおばあさんの家に着いてから、山姥だった事に気づいて逃げ出そうとするんだけど、まずはトイレに行きたいと言うんだよね。山姥は、小僧が逃げないように縄をくくりつけてトイレに行かせるんだけど、小僧はトイレの柱に縄をくくりつけて一枚目のお札を貼るんだよね。

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 するとお札が小僧の身代わりになって、山姥と会話をしてくれる。その隙に小僧は逃げ出すんだけど、いつまで経ってもトイレから出てこない事を怪しんで見に行くと、小僧はいない。走っていく小僧を見つけて追いかける山姥。小僧は二枚目のお札で大水を出して流そうとするけど、山姥はそれを飲み込んじゃった。

 今度は三枚目のお札を使って火の海にするんだけど、山姥はさっき飲み込んだ大水で消しちゃうんだよね。なんとかお寺に帰ってきた小僧は和尚さんに隠してもらうんだけど、山姥が和尚に「小僧をどこにやった?」と聞いてくるんだよね。

 餅を焼いていた和尚は、その餅を山姥に食べさせながら「お前さんは何にでも変化できるそうだけど、試しに大きなものになってみせてくれんか?」って言うんだよね。すると「お安い御用だ」って言って、天井に届くくらいの大入道(おおにゅうどう)になっちゃった。

 すると和尚は「変化するものは、たいていは大きくなれるけど、本当にすごいのは豆粒くらいに小さくなれるもんだ、お前さんはなれるか?」と尋ねた。すると山姥は「見てろ!」って言って本当に豆粒くらいに小さくなった。それを和尚さんはひょいとつまんで、餅にくるんでパクッと食べて飲み込んじゃって、めでたしめでたしなお話なんだけどね。

 これ思うんだけどさ、小僧が持っていたお札は、何でも願いを叶えてくれるって言うんだったら、山姥に出会った時点で豆粒にしてしまえば良かったんじゃないかな? そうすれば、小僧がひょいって食べられたんじゃない? 怖い思いをして逃げなくても良かったんじゃないかな?

 やっぱりさ、小僧を山に行かせる前に、山姥に出会った時のシミュレーションをしておくべきだったんだよ。お前の願った通りになるなんて、あいまいな表現じゃなくて、どうやったら山姥をやっつけられるかを、事細(ことこま)かに教えてやらないといけなかったと思うんだよね。

 まあ、和尚さんとしては、日頃やんちゃで言う事をあまり聞かない小僧を、少し怖い目に遭わせて、それを和尚が助けてあげて、自分を尊敬するように仕向けたんじゃないかなと思うんだよね。教育ということを考えると、なかなか良い方法だとは思うけど、小僧の親にしてみれば「和尚さん、ひどいよ」と思うんじゃないかな?

 まあ、教訓としては、暗くならないうちに家に帰りましょうって事だよね。どう? 眠くなった? それは良かった。じゃあ、おやすみなさい。

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