断捨離キーホルダー

「ん? 何だあれ」

 何気なく道を歩いていた吉川康生。何かが歩道脇でキラリと光っている。気になった物は何でも拾ってしまう康生は、それを手に取ってじっと見つめた。

「キーホルダーか?」

 メタルのプレートには「断捨離」と書かれている。裏には「これであなたも断捨離マスター」と。

「断捨離マスターだって? 何だそりゃ?」

 いくら康生が無知だとは言え、断捨離の意味はわかる。不要な物を捨て、生活の質を上げようというもの。とりあえず何でも拾う康生の部屋は、不要な物ばかりだった。

 キーホルダーをズボンにぶら下げてみた。「ん?」何故だろう。早く帰らなければ。何かに引っ張られるように、康生の足は自宅に向かった。

 古いアパートの二階に駆け上り、急いでドアを開けて部屋に飛び込む。いろいろな物が転がって雑然としている。「何だこの部屋?」どれもこれも、康生の目にはゴミに思えた。

 ゴミ袋を広げ、手当たり次第に捨てていく。お菓子の食べ残し、ペットボトル、雑誌、CD、DVD、シャツ、ズボン……。

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「これもいらない!」

 台所用品、洗面道具、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、ありとあらゆるものを処分した。

 全てなくなってしまった部屋。だけどまだ、何か処分していない気がする。何もない部屋を出て、外を歩きながら考えてみる。歩きながらキーホルダーをズボンから外し、手に持って太陽にかざしてみた。太陽の光に反射して、怪しげな輝きを見せる。

「そうか、わかった!」

 康生はようやく、まだ断捨離しきれていないモノに気がついた。目の前のビルの非常階段から屋上に上ると、最後に自分を断捨離しようと地面に飛び降りた。

「きゃーーーーーーー」

 絹を切り裂く女性の声が響き渡る。次々と人々が集まってくる。

 ピザ配達人の桐島正春が、配達を済ませてビルから出てきた。彼の興味は、人だかりができた理由より、離れた所でキラリと光るものに向けられた。

 気になるものは、とりあえず手にしてみないと気が済まない正春。しゃがみ込んでそれを拾うと、銀色のプレートに「断捨離」と書いてある。それをポケットにねじ込むと、そのままバイクを走らせた。

 遠くから、救急車のサイレンが聞こえてくる。

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