彼(彼女)と来た初詣。三が日を過ぎても そこここに参拝者がいる。彼(彼女)が道すがら語り始める。
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「初詣は、平安時代にあった『年籠り(としごもり)』が由来で、大晦日に家長が神社に籠って、新しい年の豊作や無病息災を夜通しで祈願するの。これは、大晦日の夜に行う「除夜詣(じょやもうで)」と、元旦にお参りをする『元日詣(がんじつもうで)』の2つがあって、『元日詣』が今の初詣となっているんだよ。
初詣は『松の内(まつのうち)までに行くといい』と言われていて『松の内』は、お正月の玄関に門松が飾られている期間のこと。正月飾りは、関東地方は1月7日まで、関西地方は1月15日まで飾る習慣だから初詣時期の目安にしてもいいみたい。でも感染症対策で混雑を避けて、今回は1月いっぱいの初詣でもいいかもね。
神社の鳥居は、聖域と外界を区別する境界線。鳥居をくぐる前に、衣服と心を整え、厳かな気持ちでね。参道は神様のための道だから、真ん中は歩かず端の方を歩くの。
手水舎(てみずや、ちょうずや、てみずしゃ)で、手や口を清める方法はね、先ず右手でひしゃくを持って左手を清める。次にひしゃくを持ち替えて右手を清める。それから、再びひしゃくを右手で持ち、左の手のひらで水を受けて、口をすすぐ。最後に左手を再び清めて、ひしゃくを元の場所にふせて置く。でも、ひしゃくに直接口をつけないように。
賽銭箱の前に立ったら軽く会釈して、お賽銭を入れて。わかっているだろうけど『二礼二拍手一礼』のやり方が基本。まず2回深いお辞儀を行い、次に両手で2回パンパンと手を打ち、両手を合わせたままお祈り。最後に手をおろし、再び1回深いお辞儀をして終了。
願い事は自分の名前と住所を伝えるって知ってた? 自分がどこの誰だか明らかにすることがマナーなんだよ。前年の報告と感謝を伝えてから新しい年の願い事やご利益を祈願するんだよ。
それからね、夢の中に神社が出てきたら、夢占いでは吉夢。近い将来良い出来事が起こるか、長年苦労してきたことが認められたりするんだって。楽しいね。あ、肝心なことはね 願い事はいくつも欲張らないこと」
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無事にお参りを済ませてから、やおら彼女(彼)が今度は語りだす。
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「姫始めってさ」
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さっきの逆襲かな? そんなインパクトある言葉耳元で言わないでー!と思う。
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「1月2日だけど」
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うわぁ。頬を赤らめて力説するこの人は……
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「本当はね。やわらかく炊いたご飯『姫飯(ひめいい)』をその年に初めて食べる日のことだよ。ハレの日は『強飯(こわいい)』って、おこわを食べるんだよ。で、お正月だとお餅を食べるでしょ?だから普段の食事に戻すことだからね……」
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こっちが赤面。知らなかったよぉ。
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「姫始めには諸説あって……」
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まだ語るのか!
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「・飛馬始め……初めて乗馬をする日
・火水始め……初めて火や水を使う日
・女妓始め……初めて裁縫をする日 なんだよね」
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神様。この無邪気で、知識が豊富な人と今年も幸せでいさせてください。
おみくじ……大吉!
出逢い運対人関係……良縁!
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