芥川龍之介 小説 独自解釈「一人の無名作家」

引用:青空文庫 芥川龍之介「一人の無名作家」

 芥川龍之介先生の書いた小説「一人の無名作家」について考えてみたいと思います。冒頭で「7,8年前のことです」と書いています。この作品が、大正15年(1926年)3月とありますので、7,8年前と言いますと大正7年か8年頃、芥川先生が26、7歳の頃でしょうか。

 海軍機関学校の教官を辞めて、大阪毎日新聞社に入社する頃だと思います。海軍の学校では、教職の合間を縫って小説を書いていましたが、新聞社に入りますと創作活動に専念するようになります。ちょうど、その切り替わりの時期だったのではないかと思います。

 石川県の方の同人雑誌に、平家物語をテーマにした小説が載っていたのを見たそうです。作者はおそらく青年で、その小説は3つに分かれていました。

 一番目は、平家物語の作者が「大原御幸(おおはらごこう)」を書こうとして、なかなか筆が進まなかったところ、突然インスピレーションが湧(わ)いて書き始めたと言う話です。

 平安時代の終わり、平清盛(たいらのきよもり)率いる平氏に不満を持つ武士たちが、源氏を後押しして平氏一族を滅ぼしますが、清盛の娘・徳子(とくこ)だけは死ぬ事なく、京都の大原にある寂光院(じゃっこういん)に出家して建礼門院(けんれいもんいん)となります。

 大原御幸(おおはらごこう)は、後白河天皇(ごしらかわてんのう)が、時の権力者・平清盛の娘であり、後白河天皇の子どもである高倉天皇(たかくらてんのう)の妻となって、安徳天皇(あんとくてんのう)の母となった建礼門院を寂光院に訪ねた場面です。

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 二番目は、平家物語の注釈者が、「甍(いらか)破れては霧不断の香(こう)を焚(た)き、枢(とぼそ)落ちては月常住の灯(ともしび)を挑(かか)ぐ」と言う文章がどのように作られたのかを調べたり考えたりしたけど、どうしてもわからない、自分はまだ学問が足りないと嘆いて筆を置く場面が書いてありました。

 三番目は、現代の場面です。中学校の国語の先生が、生徒に「大原御幸」の講義をしているところで、先生が「甍(いらか)破れては霧不断の香(こう)を焚(た)き、枢(とぼそ)落ちては月常住の灯(ともしび)を挑(かか)ぐ」と言うような語句は、昔からその出所も意味もわからないものとされていると言うと、ある生徒が「そこが天才の偉いところだ」と、独り言のようにつぶやく場面が書いてありました。
 
 私は平家物語はよく知りませんが、作者は「煌(きら)びやかな生活から一転して、質素な貧しい暮らしをしている建礼門院が、荒れ果てた寂光院と重ね合わせて映った」のではないでしょうか。それが「甍(いらか)破れては霧不断の香(こう)を焚(た)き、枢(とぼそ)落ちては月常住の灯(ともしび)を挑(かか)ぐ」の文章になったのではないかと思います。

 芥川先生は「無名の作家が書いたこの作品の出来が良かったのでよく覚えている」と書いています。そして「地方で人知れず作品を書きながらうずもれていく人は、この人に限らずたくさんいるだろう」と言っています。偶然出会った同人雑誌に素晴らしい作品が載っていた事に対する素直な感動と、まだたくさん同じような素晴らしい作品があるはずなのに、なかなか出会えない無念さが感じられます。

 インターネットが当たり前になり、紙の媒体ではなくスマートフォンで手軽に小説や漫画を読む事が出来る現代では、全国の無名の作家たちがSNSやブログなどで自分の作品を宣伝する事が出来ます。もし現代に芥川先生が生きていたら、人知れずうずもれたたくさんの作品の中から傑作を探し出して紹介してくれたかも知れません。この短編を読んでそんな事を感じましたが、皆さんはどう思いますか?

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