若き日の思い出

 久しぶりに休みがとれた。仕事があるのは嬉しいが、あり過ぎるのも考えものだ。人は誰でも、たまには一人になりたいと思うのではないだろうか。毎日誰かとコミュニケーションをとらないといけない営業職の場合、特にそうだと思うのは僕だけではないはず。

 そんな事を考えながら、愛車のエンジンをかける。この前買ったばかりの新車なのに、なかなか乗る機会がなかった。明日も休みなんだから、今日は遠出をしよう。車の中で寝るのも悪くはない。

 お気に入りのCDを何枚か持ってきた。目指すは思い出の海岸。若い頃、あの娘(こ)と出会った場所。思い出の曲を聴きながら郷愁に浸(ひた)るのも悪くはない。離婚して、晴れて独身に戻ったのだから、誰に遠慮がいるだろうか。

 県境を越え、若い頃に過ごした街を目指す。スピーカーから流れてくるのは、あの頃に聴いたサザンオールスターズの曲。海岸線の道路には良く似合う。二人でドライブをしながら良く聴いた曲だ。あの頃の映像が頭の中で蘇ってきて、ふいに見た助手席が寂しく感じた。

 笑い上戸で、僕のくだらない話にもよく笑ってくれた。彼女と会う週末が楽しみで、一週間の仕事も頑張る事が出来た。帽子が好きで、いろんな帽子を集めていた。彼女の帽子を見れば、その日の気分がわかるぐらいになっていた。

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 彼女と行った懐かしい店が見えてきて、あの日の出来事を思い出す。海に入りたくなって、二人とも水着を持ってきていなかったから、あの店で買う事にした。可愛い感じのものや大人っぽい感じのもの。いろいろ試してみながらしばらく悩んでいた。

「これなんかどう?」
「わあ、それも良いね。でもさあ、これも良いと思わない?」

 そう言って彼女が選んだのは、かなり大人っぽいものだった。まだ二十代前半だった僕は、あまりにも刺激的な水着を着た彼女をまともに見れなかった気がする。

「私たち、もう別れた方が良いね」
「うん、そうだね……」

 付き合いが長くなるにつれて、お互いをぞんざいに扱うようになった僕たち。いつまでもラブラブでいられると思っていたけど、三年も持たずに別れてしまった。まだ少しでも好きな気持ちが残っているうちに別れよう、そう言う彼女の意見に僕も同意した。彼女はわからないけど、僕は未練いっぱいの別れだった。

 その後、何度目かの恋の相手と結婚をして、つい最近離婚した。離婚の原因は、子どもがいなかった事もあるだろうが、彼女の事をいつまでも忘れられないからじゃないかと思う。

 思い出の浜辺に到着。車を降りて浜辺を歩いてみる。誰もいない海が、僕を出迎えてくれた気がする。波の音を聞いていると、彼女の笑い声に重なる。今にも彼女が、手を振って目の前に現れるような気がして、ちょっぴりセンチメンタルな気分になった。

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