ヌーヴォーとヴィンテージ〜カナ&ショウタ✴︎ season3-2

前半 ヌーヴォーとヴィンテージ〜カナ&ショウタ✴︎ season3-1

 いよいよボジョレー解禁当日。今夜は少しだけ赤ワイン飲んでみようかな? 最近忙しくてなかなか会えていないから、すごく寂しい。

 出社するとホワイトボードに人事異動の辞令が貼り出されていた。この時期にしては珍しい。うちの部署にも本社からベテランが来るらしく、おかげで毎日のように続いていた残業からやっと解放される。

 実は、ミサキからあんな話を聞かされて以来、気が気ではなかった。でもショウタはそんな人じゃないから…大丈夫!

 地下の資料室に書類を取りに向かう。

 「この階段…ちょっと薄暗くて怖いのよね。おまけにあまり人も来ないし」

 無事に下まで辿りつき、必要な書類を取り出す。

 「寒いし、怖いから早く戻ろ。」

 部屋を出た瞬間、視界が揺らぎ、立っていられなくなった。

 「やだ…どぉしちゃったんだろ…」

 「……カナ…。もう大丈夫…。」

 薄れていく意識の中で名前を呼ぶ優しい声が聞こえる。暖かい空気に包まれ、目をあけると医務室のベッドに寝ていた。ミサキが涙目でわたしの手を握っている。

 「わたし…どぉしてここに…?」

 地下で倒れているわたしを見つけて運んでくれたらしい。誰だろう…。

 「ミサキさん、もう戻って良いわよ。」

 レイコさんは、わたしが入社してからのドクターだ。ちょっと怖いけど、とってもキレイで憧れの人。

 いまいち状況が飲み込めていないわたしに、

 「たかなしが戻ってきたのよ。あなたを地下室で見つけてここまで運んで来たの。」 

 じゃあ、あの声は…。本社からのベテランって…リョウ?

 医務室でしばらく休んだ後、自分の部署に戻った。仕事に取り掛かって早々、課長に呼ばれ本社から来た部長を紹介された。

 「カナ君、久しぶりだね。またよろしく頼むよ。」

 やっぱり…。

 「あ、はい…お願いします。」
 「顔色、だいぶ良くなったね。ムリするなよ。」

 そっと耳打ちしてくる。くやしいけど、ちょっとドキドキしてしまった。そぉだ。この人はいつも自分のペースに相手を巻き込む。

 「部長! まだ体調が万全ではないので早退させていただきます!」

 外はすでに日が暮れてライトアップしている。ランドマークもワイン色に染まってロマンチックな雰囲気。

 「カナ君。ちょっと話がある。乗ってくれ。」

 有無を言わさぬ状況に仕方なく助手席に座る。クルマは都心を抜け見覚えのある公園へ。

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 「久しぶりだよな…ここ。」
 「あの…お話しって。」
 「あの時は本当にゴメン。オレ…」
 「昔話をしに来ただけなら帰ります。私たちもう上司と部下の関係だけですから…。」
 
 降りようとドアに手をかける。

 「カナ…これからしばらくの間オレの補佐をしてほしい。君が抱えている仕事は他の人に指示する。」

 ズルい。呼び捨てにするなんて…。

 動揺を気づかれまいとクルマから飛び出した。

 ショウタ…会いたいよ。だけど今ごろミサキと一緒だよね。

 近くのコンビニに駆け込み、手近なボジョレーを買って一人きりの部屋に帰る。白ワインのグラスでひと口飲んでみる。やっぱり…ニガテ。だけど、自分だけ飲めないのは悔しい。今日あった理不尽な出来事を忘れるように、ひと口、またひと口と飲み続けた。

 遠くでスマホが鳴っている。たかなしかも知れない…。もぉ、そっとしておいて。

 留守番電話になり、耳をすましていると、

 「カナさん! 大丈夫ですか? 倒れたって聞いて。今から行きますから待っててください!」

 あたしがどこにいるかも聞かないで「待ってて」な〜んて、おかしな子ねwww

 仕方ないから電話した。

 「ショウタ君。さてわたしはどこにいるでしょうか♪」.
 「お酒飲んでるでしょ! ふざけないでどこか教えてください!」
 「へへっ。ごめん。部屋にいるよ」

 10分後…

 「早かったね。今日はミサキとデートだったのに〜いいの?」

 何心にもないこと言ってるんだろ…。やっぱり赤は嫌いだ! ショウタが怖い顔でわたしをみている。だよね、こんな酔っ払い、もぉ嫌いだよね。

 「カナさん、もぉ休みましょ。これ以上飲んだら…えっ?ボジョレー。」
 「一緒に…飲みたかったの…でもやっぱりムリみたい」
 「ムリはダメって言ったでしょ?せっかくカナさんの好きなの買って来たのに…」
 「ん?白ワインだ♪え…コレ…」
 「そぉです。ヴィンテージ。カナさんの生まれ年のです。ボジョレーは毎年飲めるけど、貴重で深みのあるワインは大切な人と飲みたいから。」

 こんなにステキな人。今のあたしには不釣り合いだ。カレの幸せを考えるなら離れた方がいい? …いや! あたしがカレと釣り合う女になればいいのよね。

 ヌーヴォ(新酒)とヴィンテージ(年代物)。

 相反するものだけれど、それぞれの良さを認めれば今までにないステキな世界観が広がるよね。きっと…。

〜fin〜

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