「ひとりぼっちでもいい」漫画家・蛭子能収さんインタビュー

中学時代にいじめを受けていたという、漫画家・蛭子能収さんのインタビューです。

「ひとりぼっちでもいい」 蛭子さんが語る真の友達とは

小池 寛木

 中学時代にいじめを受けていた漫画家・蛭子能収さん。「友達は無理につくらなくてもいい」と話します。つらい学校生活を経て、編み出した蛭子流「友達論」。学校や人付き合いに悩む10代に向けて、語ってくれました。

全部読めなくてもいいです、これだけ覚えておいて
【蛭子能収さんのメッセージ】
・無理して人に合わせるのはつらい。ひとりぼっちでもいい
・学校やクラスなど環境が変われば、いじめはなくなります
・誘われても断ることができる。そういう人こそ「真の友達」

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えびす・よしかず 1947年、熊本県生まれ。生後すぐ長崎市に移る。高校卒業後、ちりがみ交換の作業員、掃除用品の営業マンなどを経て33歳で漫画家に。「ヘタウマ」な画風の草分け的存在で、不条理な作風で注目を集める。タレントや俳優としても活躍。著書に「ひとりぼっちを笑うな」(角川書店)、「地獄に堕ちた教師ども」(青林工藝舎)など。70歳。

絶対に負ける自信があった

――中学時代にいじめを受けていたと聞きました
 
 中学2年生の時に、不良グループからいじめを受けていました。グループの下っ端扱いされて、後片付けを頼まれたり、カバン持ちをさせられたりしていました。

――抵抗はしないのですか

 しないです。「俺は絶対負ける」っていう自信があったんですよ。情けないんですけど。殴られるってことが一番嫌でしたね。ただ、「なんばすっとかー!」って言うくらいの抵抗でした。だから、面白がっていじめてたんじゃないですかね。

――周囲の人たちは助けてくれないんですか

 先生がなんで救ってくれないんだって思いはありました。先生だったら、生徒の様子を見ててわかりそうなものじゃないですか。もう学校を辞めたいくらい嫌でした。

いじめっ子に漫画で「報復」

――その頃、家ではどう過ごしていましたか
 
 家に帰ると、好きだった漫画をひたすら描いていました。いじめを受けた悔しさを絵にぶつけていました。自分をいじめた人をひそかに「敵役」にして、めちゃくちゃ倒す、というようなものを描いていましたね。

――高校に行って環境は変わりましたか

 高校で美術部に入ってから、学校に行くのがすごく楽しくなりました。一人で黙々と、絵を描くだけというだけなんですけど、それが静かで平和で、すごくいいなあって。自分には合っていましたね。

 学校やクラスなど環境が変われば、いじめはなくなります。俺はそれまで我慢しました。

友達はつくらなくてもいい

――当時、友達はいなかったんですか

 俺ね、友達をつくるのがすごく苦手だったんですよ。無理して他人に合わせていると、気持ちが疲れてきますから。学生時代はほとんど一人で過ごしていました。

 友達はいい場合もあるけれど、悪い場合をひいたらそこから抜けられなくなって、恐ろしいことになります。変な友達を作ると、その人から逃れられなくなります。

 地獄のような目に遭いたくなければ、友達をつくらないほうがましです。それは俺、はっきり言えます。
 
 友達をもしつくるんだったら、深く付き合わないことですね。広く浅く。何人もいる友達の中の一人、そういう感じで接したほうがいいです。

深い付き合いはしない

――深い付き合いができる親友は必要ないですか

 深く付き合うのはやめたほうがいいと思う。一人と長く付き合うと、その人の性格がだんだんわかってくるに従って嫌になってくるので。いつでもその人から逃げられるような、離れられるような感じの友達だったらいいと思います。

――それは友達と呼べるのでしょうか……。距離感が大事ということですか

 性格とか見抜けない間は、あまり深い付き合いはしないほうがいいですよ。中学生くらいはわからないんですね。高校くらいになって、やっと相手の性格がわかってくるものです。

 この人は絶対安全だと、分かってきた時に、ちゃんとした友達をつくればいい。付き合っていても割とさらっとしているし、いさかいもなく平和的に付き合いをやめることができそうなら。

蛭子的「真の友達」とは

――なぜそこまで友達に警戒するのですか

 そうしないと、すごい疲れることになるし、つらい思いをすることになります。友達に気を使うあまり、だんだん自分が疲れてきますから。

 誘われても断ることができる。そういう人こそが「真の友達」だと俺は思う。あいつに誘われて仕方なく行くかという感じだと、どこか操られています。

 悪い人なら一緒に悪いことを働かざるを得なくなる。本当、友達っていいようであって「毒」があります。

時に自由を奪う存在に

――「毒」ですか

 最初友達だと思っても、相手の性格をきちんとわかっていないもの。だんだん、横柄になってくる人がいるから。

 俺が命令されるほうだったので。だいたい、いつの間にか「蛭子、あれ買ってきて」みたいな関係になっています。

 きょう映画を見に行こうかなと思っていたら、友達から電話がかかってきて「きょうは野球をするよ」。ガクってくるじゃないですか。友達は、自由を奪う存在にもなります。

無理して合わして生きるのはつらい

――いつの間にか主従関係できてしまうと

 そしたら、少しずつ遠ざかっていったほうがいいですよね。急に態度を変えるのは変だから、ゆっくりゆっくり離れていく。10代のころは誘われても断れず、どんどんその人に付きあうんですよね。落ちていくというか、変なことになっていく可能性がある。気をつけたほうがいいです。

――蛭子さんの「友達論」。10代の共感は得られますか

 誰でも彼でも友達さえつくればいいんだよ、という考えはないです。無理して人に合わして生きるのは、本当につらい。ひとりぼっちでもいいんですよ。それを広めていければいいですね。

取材を終えて感じた「ひとりぼっちの勇気」

 ぶれない人。そんな印象をもちました。蛭子さんの友達論の底流には、自由を何より大事にする価値観が一貫してありました。

 一見気ままなように見えても、それは、ひとりぼっちでいることの覚悟や強さに裏打ちされたものです。

 誰もが蛭子さんのように生きるのは難しいかもしれない。けれど、彼の本音の言葉が少しでも心の足しになってくれれば。自分にとって「友達」とは何なのか、考えるヒントになってくれれば、と思います。

[出典:「ひとりぼっちでもいい」 蛭子さんが語る真の友達とは(withnews(ウィズニュース) > https://withnews.jp/article/f0180829000qq000000000000000W08g10101qq000017898A ]

「無理して友だちをつくらなくてもいい」
今、人間関係で悩んでいる若い人たちに考えてもらいたい内容ですね。
好きな事をやっていくうちに、自然と友だちは出来ますから。

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