親友とカラオケに来て

 賑やかな街の一角にあるカラオケ店の一室に、真知子と恭子は入ってきた。職場は違うが、明日が休みと言う事もあり、仕事を終えた後に待ち合わせてやってきたのだ。二人は高校の同級生、卒業してからも仲が良く、旅行や遊びに行ったりしている。

「今日は暑かったね」
「……うん」

 真知子は、恭子に会った時から覇気がない事を気にしていた。いつもならコロコロと笑う彼女に笑顔がない。さりげなく聞いてみる。

「恭子、何かあったの?」
「……ううん、大丈夫」

 無理に笑顔を作ろうとしている恭子が痛々しい。いつもは自分の愚痴を恭子に聞いてもらう真知子。職場での人間関係で嫌な事があると、すぐに恭子に電話をする。後ろ向きで悩んでばかりいる真知子に比べ、恭子はいつも前向きで明るい。真知子は彼女からたくさんの元気をもらっていた。

 そんな恭子がひどく落ち込んだ様子でいる事に、真知子は自分の事のように胸を痛めていた。共感性が強く、相手の気持ちに敏感な真知子。傍(そば)にいるだけで、彼女の悲しみが伝わってくる。

 悲しみに耐性があるなら、いつもの事だと思って耐えられるだろう。しかし、悲しみに耐性がないなら、突然の悲劇にショックを受けてしまう。親友がまさに今、その状態なのだと真知子は思った。

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「じゃあ、歌おうか? 私が先に歌うね」

 そう言って真知子は、明るい歌を選んで歌った。恭子の心が明るくなるように、前向きでポジティブな歌を歌った。ふと彼女を見ると、一生懸命に曲選びをしている。

 歌い終わった真知子は、マイクを恭子に手渡した。恭子が選んだのは、寂しい別れの歌。イントロが流れ始めると、彼女の瞳が潤んできた。ハンカチを取り出す恭子。その姿を見ながら、真知子の胸は絞めつけられるように痛くなる。

 恭子は気丈に歌おうとするが、言葉に詰まって止まってしまう。歌えないで下を向いている恭子に、真知子は思わず駆け寄って抱き寄せた。

「恭子、もう良いよ」

 そう言って、恭子を座らせた後、音楽を止める真知子。恭子は真知子の胸に顔を埋(うず)め、声を出して泣いている。真知子は黙って、彼女の背中を摩(さす)り続ける。恭子は泣きながら、ぽつりぽつりと話を始めた。

 三年間付き合ってきて、結婚も考えていた彼から突然、別れを告げられた。その理由が、浮気相手の女性が妊娠してしまったから、責任をとって結婚するという事だった。話し終えて再び号泣する恭子。彼女の胸の痛みに共感して、真知子の胸もちくちくと痛くなる。

「恭子、今日は思いっきり泣いて良いよ。気が済むまで泣いたら良いよ。私が傍にいるからさ。明日は休みだし、延長しても良いよ。そしてもし、元気が出たら、歌を歌おうね」

 真知子はそう言うと、恭子と一緒に泣いた。

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