改作・昔話「花咲(はなさか)じいさん」

 ねえ、眠れないの? 困ったなあ。じゃあさ、眠くなるように昔話してあげるね。

 むか~しむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。二人は子どもがいなかったので、シロという犬をとても可愛がっていました。へー、この犬はシロって名前なんだ。本によっては、ポチって名前の時もあるけど、統一されてないんだね。たぶん、白い犬なんだろうね。じゃあ、シロは何犬なんだろう?

 ここ掘れワンワンと言うぐらいだから、室内犬じゃないよね。外で飼ってるだろうからね。柴犬あたりかなあと思うんだけど。でもさ、犬が「ここ掘れ」って言うのもおかしい話じゃない? よく、飼っている犬や猫が、人間の言葉を喋(しゃべ)ったなんて言う人がいるけどさ。

 テレビ局なんかが取材に行くと、実際はそうは聞こえなかったりするよね。あれはどう考えても飼い主の思い込みって言うか。「うちのワンちゃんは賢いんですよ」って言いたいだけなんだろうね。そう考えると、このおじいさんとおばあさんも、かなりこの犬を溺愛(できあい)していたんだろうと思う。

 もしかしたら、犬に服を着せたりしていたんじゃないかな? 昔だから、服じゃなくて着物になるんだろうね。この時代の人たちも、犬にオシャレさせたかもね。子どもがいなかったからって言うぐらいだから、すごく愛していたんだと思うよ。

 犬ってさ、飼い主の言う事をよく聞いてくれるから可愛いよね。その点、猫は、言う事を聞かないイメージがある。こっちが来てほしい時には呼んでも来ないし、忙しくて来てほしくない時に限って、ゴロニャーンと甘えてくるんだよね。もうほんと、困るんだけど、可愛いから許しちゃうんだよね。

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 まあ、とにかく、おじいさんおばあさんには「ここ掘れ」って聞こえたんでしょう。それで、「そんなにお前が言うなら掘るよ」って言いながら掘ってみたら、大判小判がざくざく出てきたんだってさ。そりゃあもう、驚いちゃうよね。いわゆる埋蔵金(まいぞうきん)なんだもんね。

 このおじいさんの良いところは、ここで満足しちゃうところだと思う。欲張りじいさんだったら、「もっとあるんじゃないか」って思って、その後の一生を埋蔵金発掘に費(つい)やしてしまうかも知れないよ。そうそう、それで、その話を聞いた隣りの欲張りじいさんが「シロを貸してくれ」って言ってくるんだよね。

 ここで問題なのが、隣りのじいさんにしゃべっちゃうところなんだと思う。大判小判が出てきた事を黙っていたら良かったんだよ。自慢げにしゃべっちゃうもんだから、シロが殺されちゃったんだよね。まあ、人が良いと言うか、誰でも彼でも信用し過ぎるところがあったんだよね、このおじいさんは。

 性善説と言うか、根っからの悪人はいないと思っていたんだろうけど、やっぱりさ、人をあんまり信用しちゃいけないんだよ。「人を見たら泥棒と思え」って、母からよく言われたんだけどね。子どもの頃は私も「さすがにそんな事ないでしょ」って、心の中で思ってたんだけど、社会に出ていろんな人に騙されて裏切られて、やっぱり母が言った事は本当だったなって思った。

 このおじいさんなんかさ、もし宝くじが当たったらいろんな人に「宝くじ当たったー!」って言って回るタイプだと思うよ。そうすると、いろんな人が寄ってくるわけ。寄付してくださいとか、宗教に入りませんかとか、金貸してくれだとか。海外なんかさ、それで殺されちゃう人もいるしね。

 だからさ、もし宝くじが当たっても、誰にも言わずに黙っていないといけない。家族にも言わないようにしないとね。急に会社を辞めたり高級車を買ったりすると、バレちゃうから、普段と変わらない生活を続ける事が大事なんだよね。

 それで、夜中に一人、布団の中で、預金通帳を眺めながらニタニタするのが良いんだよね。まあ、私が言いたいのは、シロが死んでしまった大きな原因は、おじいさんの危機管理能力のなさにあったって事なの。そこのところ、テストに出るから、覚えておいてね。どう? 眠くなった? それは良かった。じゃあ、おやすみなさい。

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