改作・昔話「こぶとり爺さん」

 ねえ、眠れないの? 困ったなあ。じゃあさ、眠くなるように昔話してあげるね。

 むか~しむかし、あるところに、頬(ほお)に大きなこぶのある、隣同士の二人のおじいさんがいました。片方は正直で温厚なおじいさん、もう片方は、こぶをからかった子どもを殴る、乱暴で意地悪なおじいさんでした。

 まあ、こぶとり爺さんと言っても、ぽっちゃり体型のおじいさんじゃないんだよね。顔にこぶがあって、それを鬼が取るからこぶとりって話なんだけど。

 鎌倉時代の物語に収められているぐらいだから、結構古い話なんだね。一般的に知られているのは、正直者のおじいさんが、夜更けに鬼の宴会に出くわして、鬼の踊りを見ているうちに自分も踊りだしちゃって、おじいさんの踊りが結構上手かったのか、鬼が気に入っちゃって酒やご馳走をすすめてくれるんだよね。

 それで、また明日も来いよと言って、明日来たら返してやると言いながら、おじいさんのこぶを「すぽん」ときれいに取っちゃった。それを聞いた隣の意地悪なおじいさんが、自分もこぶをとってもらおうと、鬼の宴会に出掛けていくんだよね。

 ところが、意地悪なおじいさんは踊りが下手だったみたいで、鬼が怒って「へたくそ、こんなこぶ返してやる。もう二度とくるな」と言って、反対側の頬にこぶをくっつけられて、こぶが二つになっちゃったって話なんだけど。よくよく考えてみたら、可哀想な話だよね。

 この話の問題点は、正直者のおじいさんの話を、意地悪なおじいさんがどこまで聞いていたかなんだよね。鬼がこぶを取ったのは、正直者のおじいさんをもう一度こさせるためで、鬼にしてみれば、このこぶは大事なこぶだろうから、必ず取りにくるだろうと思っていたんだよね。

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 その辺の鬼の気持ちを、意地悪なおじいさんに伝えていたかどうかが問題なんだよ。ただ、「鬼の前で踊りを踊ったら、鬼が喜んでこぶをとってくれた」なんて嬉しそうに自慢しただけかも知れないよね。あるいは、もっと詳しく説明しようとしたのに、意地悪なおじいさんが最後まで話を聞かずに行っちゃったのか。

 この話の前提として、正直で温厚なおじいさんという設定になっているけど、表面上は優しそうでも、腹の中は真っ黒って事もあり得るよね。そうだとしたら、意地悪なおじいさんの踊りが下手な事を知っていたうえで、鬼の前で踊らせようとしたのかも知れない。

 そして、下手な踊りを見た鬼が怒って、自分から取ったこぶを、意地悪なおじいさんにくっつけるであろうという事を、想定していたのかも知れないよね。そうだったとしたら、この人は相当な腹黒おじいさんって事になるんじゃない?

 意地悪なおじいさんが隣に住んでいたら、相当嫌な思いをしてきたと思うよ。表面的にはニコニコしながら付き合っていたとしても、心の中では「この野郎!」って思いながら、いつかはギャフンと言わせてやろうと思っていたのかも知れないね。

 それで、わざと詳しく言わないで、「あんたも、鬼にこぶを取ってもらえば良いんじゃない?」なんて、軽いノリで勧めたんじゃないかな。意地悪なおじいさんは、正直者の隣のおじいさんが嘘を言うはずがないと、信じきっていたと思うんだよね。

 たぶん、長い間の恨みが、積もり積もっていたんだよね。隣同士って事は、子どもの頃からの幼馴染み。意地悪なおじいさんが、正直者のおじいさんをイジメていたかどうかはわからないけど、心の優しい人にとっては、悪い心を持った人が隣りに住んでいるだけで苦しいと思うんだよ。

 きっと、正直者のおじいさんは、繊細な心の持ち主だったんだよね。だから、たとえ自分が殴られなかったとしても、殴られて痛い思いをしている人の苦しみが、自分の事のように伝わってきたんじゃないかな。そういうのを毎日見ていたら、そりゃあもう、苦しかったと思うよ。

 だから、意地悪なおじいさんを懲らしめてやりたいと思っていた、正直者のおじいさんにとっては、ようやく巡ってきた千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスだったんだよ。つまり、この話が言いたいのは、隣人には気をつけろって事じゃないかな。どう? 眠くなった? それは良かった。じゃあ、おやすみなさい。

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