自己肯定感が低くて悩む事ってありませんか?
「自己肯定感」をムリヤリ高めても「悩み」は消えない!心理カウンセラーが説く“大きな誤解”
2021.10.02
山根洋士 心理カウンセラー
巷でよく見かける「自己肯定感を高めよう!」というメッセージ。しかし、発売から10ヶ月で8万部を突破した書籍、『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)の著者で心理カウンセラーの山根洋士氏は、「自己肯定感を無理に上げる必要はない。むしろ逆効果になることもある」と指摘する。一体、どういうことなのか? 心がラクになるヒントを教えてもらった。
自己肯定感に関する大きな誤解
新型コロナの流行も相まって、「うつ」をはじめとしたメンタルヘルスの問題が身近なものになりました。今回は、特にその中でもよく聞くようになった「自己肯定感」についてお話ししようと思います。
最近ではテニスの大坂なおみ選手が、自身のSNSで「私は自分に対して『よくやった』と思ったことがなく、いつも『私はダメだ』とか、『もっとうまくできたはずだ』と思ってしまいます」と自己肯定感の低さを吐露したこともありました。
つい「私なんて…」と思ってしまう“自己肯定感低めの人”は、そんな自分とどう付き合っていけばよいのでしょうか。
この言葉が浸透するにつれて、日々カウンセリングをしている私の元に「自己肯定感が低いのですが、どうしたらいいですか?」と単刀直入なご相談をいただくことも増えています。彼らにしてみると、自分が悩んだり苦しんだりするのは自己肯定感が低いからだ、という訳です。
では、自己肯定感が上がれば万事解決なのでしょうか?
実は心理の世界から見るとこの答えはある意味「YES」なのですが、書籍やメディアでも自己肯定感の「上げ方」ばかりに注目する記事が目立ち、肝心の「自己肯定感とは何か?」についてはあまり触れられていません。
それどころか、上げ方についても誤った情報ばかり。これでは自己肯定感は高まるばかりか、逆効果になる危険性さえあります。
むしろ自己肯定感は高めようとしなくて良いんです。これから、その理由をお話ししていきます。
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「ありのまま」こそ最高の状態
そもそも自己肯定感とは、ありのままの自分でいいという「感覚」のこと。よく言われるような、自信のある・なしとは全く関係がありません。
自己肯定感は、生まれた時には誰もが持っている感覚です。
赤ちゃんを想像してみてください。卑屈になっている赤ちゃんだとか、自分の長所を探す赤ちゃんがいたらヘンですよね(笑)。
楽しいことがあれば思い切り笑い、嫌なことがあれば大声で泣く。
まさしく「ありのまま」です。
自己肯定感が高い状態には、自分を他人と比べたり、パフォーマンスが悪いときの自分はダメで良い時の自分はマル、ということもありません。
さらに言ってしまえば、良いも悪いもなく、「どちらでもいい」のです。ありのまま、とはポジティブな自分にもネガティブな自分にもOKが出ていること、良い・悪いが気にならない状態のことです。
この定義に触れないまま自己肯定感を上げる方法を試しても、「自己肯定感が低い自分はダメ」「高い自分はOK」と、新たな○×が加わるだけです。
自己肯定感とは生まれつき誰もが持っている感覚です。もし低いと感じても、それは忘れているだけ。必ず取り戻すことができます。
「ネガティブ」は悪いものではない
また、よくあるのが「自己肯定感が高い人=ポジティブな人」という盛大な勘違いです。
前向きであることやポジティブ思考であることは、これまた自己肯定感とは全く関係がありません。
それどころか本来、心理学には「ネガティブ思考は良くない」という考え方はありませんでした。人間にはポジティブな面もあれば、ネガティブな面もあるのは自然なこと。どちらの面もあって良いのです。
しかし、日本でポジティブ思考が流行った時にネガティブを後ろ向き、悲観的といった言葉が使われたせいか、ポジティブな方が良い、ネガティブなのは悪いことという印象がついてしまいました。
前向きなことはもちろん良いことですが、いき過ぎると怒りや悲しみといった、人間が元々持っているネガティブな面や感情を抑圧することにつながります。
実際、私にはこんな経験があります(笑)。
私は30代の頃に自己啓発にのめり込み、高額なセミナーに1000万円ほど資金をつぎ込んでいました。
当時はポジティブ思考が全盛の時代。セミナーではやる気を高揚させるようなやり方が主流で、「俺はできる」「俺には自信がある」と、一度ハマるととことんやってしまう私は半ば自己暗示で「自分は死なないんじゃないか」というくらいガンガン自分を追い込んでいました。
もちろん、頑張ろうと思っても「あれ、疲れたな?」とできない時もあるのが人間です。しかしその時の私は自分のネガティブな感情に無理矢理蓋をし、ひたすらに頑張ってしまったんですね。
その結果、心身の悲鳴に気づけず過労死寸前に。そして私は「このままじゃマズイ」と心理療法の扉を開くことになったのでした。
……と、これは極端な例ですが、ネガティブ感情を抑圧すると大きなしっぺ返しが来るばかりか、本当の自己肯定感とは程遠い状況になるということです。
「メンタルノイズ」にまず気づこう
加えて、私が「自己肯定感は上げようとしなくていい」と言うにはもう一つ理由があります。
それは個人の心のクセ(=メンタルノイズ)を無視して自己肯定感を取り戻そうとしても逆効果になることがあるからです。
メンタルノイズとは、幼少期の経験に基づいて作られる心のクセ・マイルールのようなもの。
例えば、親から理想を押し付けられることが多い環境で育つと、「ありのままの自分じゃない方がいいノイズ(ありのままの自分封印ノイズ)」が形成されることがあります。
このノイズは、ありのままの自分でいない方が親から愛情をもらえた、という子供の一種の生存戦略です。しかし、この戦略が大人になっても働くと、必要以上に他人と比べて落ち込んでしまったり、過剰に空気を読んで生きづらさを感じたりと、悪い方向に働くことがあります。
このノイズが解消されないまま自己肯定感を取り戻そうとしても、ありのままの自分は押さえ込んだままなので当然うまくいきません。
自己肯定感を取り戻すには、まずはこの「心のクセ」に気づくことが重要になります。
繰り返しになりますが、自己肯定感は高めようとする必要はありません。
それ以上に大切なのは、自分の心のノイズに気づき「自己納得感」を持つこと。言い換えれば、自分の心の現在地点を知ることです。
落ち込んだり、悩んで身動きが取れなくなったりした時に「あぁ、あのメンタルノイズが反応しているんだな」とわかれば取り敢えず現状を把握できます。
メンタルノイズは心のクセです。クセは知らず知らずのうちについやってしまうもの。出てしまっても自分を責める必要はありません。
良いも悪いも含めて、自分に納得する。
それがひいては、自己肯定感を取り戻す大きな一歩につながります。
[出典:「自己肯定感」をムリヤリ高めても「悩み」は消えない!心理カウンセラーが説く“大きな誤解”(マネー現代)(講談社 > https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87190 ]
「自己肯定感は高める必要はない」というお話にびっくりしました。
Twitterを見ていても、「自己肯定感を高める」等の話題をよく目にしますから。
”大切なのは、自分の心のノイズに気づき「自己納得感」を持つこと”
”良いも悪いも含めて、自分に納得する”
なるほどと思いました。
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