「ただいま」
「おかえりっ カナさん。」
嬉しさがつい顔に出てしまう。
「ん?どうかしました?」
ショウタが不思議そうに私をみる。
ヤバい…可愛すぎる。
「カナさん、また食事サプリで済ませてるでしょ?」
「マルチビタミンだから栄養満点だよ。」
一人だと好きなものを食べるというより
生きるためにとりあえずってカンジ。
そんな私を心配して週に一度
ショウタがご飯を作りに来てくれる。
ふつーは彼女が作るのにね…www
「あ、そうだ!カナさん、次の日曜日って何か予定ありますか?」
休みの日はデート?だけど私たちはお互いの予定を尊重するの。
基本1人でいることが好きだし、カレも家族や友人達と過ごすことが多い。
最近忙しすぎて、休みの日でも仕事や家事に追われてる。
「特には何もないけど…そろそろ癒しが欲しいなwww」
「もぉ…その顔、可愛い過ぎますから。」
優しく唇が触れてカレの息づかいが間近にきこえる。
いつもと違う長くて深いキスにとろけそうになる。
「ん…ショ…ショウタ…?」
苦しくなってカレの背中を軽く叩く。
いつの間にこんなキス…。
急に大人っぽくなったカレにドキドキが止まらない。
「つ、次の日曜日が、ど、どうかした?」
「これなんですが…カナさん、好きですよね?」
何事もなかったようにショウタが一冊のパンフレットを見せた。
「もぉこんな季節なのね。」
そこには私の大好きな薔薇が一面に咲き乱れていた。
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…次の日曜日……
残念ながら、雨。
濡れた薔薇って大人の恋を連想させる…。
大人の女性が耐え忍んで泣いてるみたい…だから好きなのかも。
「カナさん⁉️大丈夫ですよ。このあとゼッタイ晴れますから!」
そんな思いが顔に出ていたのか、突然明るい声で言う。
「だね!ショウタ〜今日は忙しいからしっかりついてきてねっ。
まずは…このエリアのバラ達を堪能して、ランチして、おやつはローズソフトクリーム♪そのあとはshopで薔薇グッズをゲットするよー」
まるで仕事モードである。
「バラっていろんな色あるんですね。オレンジって初めてみた…」
「でしょ。色はもちろん、花の形もいろいろあるよ。ちなみにこの薔薇の花言葉は無邪気とか信頼って意味よ。」
「さすがカナさん!じゃぁ、これは?」
「おっ、お兄さん!お目が高いですなぁ。それはだね…」
バラの香りがそぉさせるのか、時間を忘れ、まるで子どもみたいにはしゃいでいた。
ふと気がつくと閉店1時間前のアナウンス。
ジャスミンローズの香水と薔薇のモチーフのフォトフレームを買って、ローズガーデンをあとにした。
「ショウタ。今日は連れてきてくれてありがと。最近忙しくて、季節の変化も感じとる余裕がなかったから…。すっごく嬉しい。」
「…だと思ってました。だって最近のカナさん、難しそぉな顔して眉間に縦線入ってましたもん。www
仕事は手伝えそうもないので何か出来ないかなって思ってました。」
いつも可愛いくて弟っぽく思ってたけど。そうだよね、ショウタもオトコなのよね。
いつまでそばにいてくれるかな…。キミもいつかわたしから離れていくのよね。
「カナさん、ハイ、これ。今日はなんの日か知ってますか?」
「えっ?かわいい❤︎ミニバラの鉢植えじゃない!しかもピンク♪あたし大好きなの〜。
ん?今日…6月10日よね。付き合って1年?まだ先よね。初めてキスした日…でもないし。」
「違いますよ。今日は…✴︎時の記念日✴︎です。これからもカナさんのそばでずっと幸せな時間、過ごしたいから。よろしく!の意味を込めて。」
「今日のショウタ…カッコよすぎるよwww」
「そぉでしょ!いつまでも、可愛いショウタくんじゃありませんからねwww
ちなみにピンクの薔薇の花言葉は…おしとやかで、上品で、かわいい人。」
「が、がんばります…。」
あの日から、ちょうど一年……
また薔薇の季節が巡ってきた。
「ショウタ。今日は✴︎時の記念日✴︎だよ…。幸せな時間過ごせてる?
あたしはあいかわらず、眉間にたて線入れながら仕事してるよwww」
爽やかな風が吹く山の頂。眼下には、ところ狭しとクルマや人が行き交うのが見える。
だけどここには色とりどりの花が咲いていて、家族や恋人たちがお弁当を広げている姿も見える。
あの日二人で選んだバラのフォトフレーム。
カレの笑顔の横にオレンジ色のバラをそっと飾った。
〜fin〜
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