私は本業の傍ら、ある教室を開いている。昔から、人に教えるのは好きなので、楽しみながら少しお金をいただくという感じだ。
霊感・目に見えないもの・不思議な力・奇跡など、ホンマかいな?という類いのことが昔から好きなので、同じような人たちが集まってくる。
ある冬の寒い日に、五〇代の女性が訪ねてこられた。彼女は、隣の市でスナックをやっているママさんだった。スラリとした体形で、小綺麗な、いかにもママさんっていう女性だった。
彼女は霊が視えるというよりも、「そこに居るのがわかる」というタイプだった。彼女いわく、「マッサージ店や温泉施設で、みんな霊を落としていく」のだそう。
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そして、憑いていなかった人が 逆に拾ってきちゃうのだとか。だから、「そういうところに行くのは控えたほうが良い」とのこと。
「へー、なるほど」と思った。たしかに、うちの近くの温泉施設でも、入浴中に亡くなる方が多い。しょっちゅう救急車がやってくる。ということは、亡くなった原因が《霊によるもの》という可能性もあるのかも知れない。
私は 趣味と実益を兼ねて占いをするのだが、かなり深い因縁ドロドロ話を聞いたあとはドッと疲れが出る。ひどいときは、一日中寝込むときもある。
自分自身、霊が視えることはないのだが、感受性が強いので憑依体質という自覚はある。それは 相手に憑いている霊を引き受けてしまうのか、それとも影響されてしまうのかはわからないが、自分は疲れて相手はスッキリして帰るということはよくある。
だから、電話の声を聞いただけで「この人には会いたくない」と感じてしまうと、間違いなくあとでダメージが大きいのだ。
これは多分に、母方のおじいさんの影響が強いように思う。母方のおじいさんが六十一歳のときに、自宅の納屋で首つり自殺をして、それを見つけたのが私の母だった。その血筋からか、私は中学時代から《自殺願望》が強かったのだ。
ことあるごとに、おじいさんの気持ちが胸の奥にずしーんと感じられるのである。そんな背景もあってか、《霊界に近い人たち》が近づいてくるように思える。
そのママさんだが、数年前から気功を習いはじめたとのことで、《気》を送れるようになったというのだ。気といわれても、あまりピンとこなかったのだが、いろいろと教えてくれた。
まず、両手で《球》を握るようなイメージをする。その球が大きくなるようにイメージしながら、気を集めるのだそうだ。
ママさんいわく、「小さな切り傷なら、気を送って二十四時間で治せる」とのこと。
実際にやってほしかったのだが、わざわざ切り傷を作るわけにもいかないので、実際に目で見ることはできなかった。
代わりに、私に向かって気を送ってもらった。すると、右肩にビンビン感じるのだ。ママさんが送る《気の通り道》から外れると感じなくなるのだが、再びその通り道に入ると、ガンガン当たるのが感じられた。
あるとき、そのママさんが来る前に、とてもおしゃべりな初老の男性が来ていた。その男性はいつも饒舌で、来ると必ず長話をしていく。
その後、ママさんがやってきた。男性は構わずしゃべり続けていたのだが、しばらくすると、笑顔になって帰っていった。
ママさんいわく、「おしゃべりな人は霊が憑いている」とのこと。
少し離れたところから、その男性に向かって気を送っていたそうだ。そして、その霊がとれたので、それまでの陰気な顔から笑顔に変わって帰っていったのだった。
気功で霊がとれる?
そのときはよく理解できなかったが、のちのち《ハンパなく凄い気功師》に出会うことで納得するようになった。その話はまたいずれ……。
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