「ねえ研(けん)ちゃん、私たち、別れましょう」
あなたが言った別れの言葉。僕には全然響かない。だって、そんなに素敵な瞳で言われたら、別れの言葉になんて聞こえないんだもの。愛の囁(ささや)きにしか聞こえないよ。
「君はまだ子どもなのよ」
いつもそう。あなたは僕を子ども扱いする。僕だって、もうすぐ二十歳になる。もう働いているし、一人暮らしだってしている。体だって鍛えているんだ。ほら見てよ、僕の筋肉。かっちかちでしょ? お姫様だっこだって出来るよ。あなたはさせてくれないけどね。
あなたはよく言うよね。僕とあなたは年の差があり過ぎると。だけど、僕たち以上に年の差のカップルなんて、世の中にたくさんいる。愛する事に年齢なんて関係あるのだろうか。
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「世間が許さないの」
どうしてみんな「世間が世間が」って言うんだろう。世間なんて関係ないよ。世間が僕たちに何をしてくれるって言うんだ。名前も知らない人たちのために、どうして我慢しないといけないのかわからないよ。
あなたの瞳を見ていると、本当の気持ちじゃないように思えるんだ。きっとまだ、僕の事を愛している。あなたのその綺麗な顔に似合う綺麗な瞳が、隠しきれないあなたの気持ちを映しているように見える。
「君は若いんだから、もっと良い人探してね」
あなたは僕にそう言うけれど、僕にはあなたしかいない。あなた以上の人にこれから出会うなんて出来そうにない。だから、別れようなんて言わないで。
あなたは美しい。本当に美しい。たとえあなたが愛してくれなくても、僕はあなたを愛し続ける。これからもきっと。
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