君は、僕を愛しすぎたんだね。僕にはわかる、君の一途な愛が伝わってくる。ああ、僕がそこにいられたら、君を守ってあげられたのに。
君は知らなかったよね。僕がどうして死んでしまったのかを。あれは事故なんかじゃないんだ。全て、あいつが仕組んだ事だったんだ。
君に知らせたかったけど、何度君に向かって話しかけても、僕の言葉は君には届かなかった。君が何日も泣き続ける姿を、僕は透明な体のまま見つめる事しか出来なかった……。
僕を失って精神的に参ってしまった君の心に、あいつはすーっと入り込んできた。君の心を誘惑し、遂には体までも……。僕はただ、それを見ているしか出来なくて……。
君があいつと結婚する事になった時は、正直驚いたよ。君があんな奴の事を好きになるなんて、信じられなかった。
だけど、今、僕ははっきりとわかった。君は僕だけを愛してくれていたんだね。今、君の目の前に横たわっているあいつの姿を見て、僕は確信した。
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全て、あいつの自業自得なんだ。君は全然悪くない。だって、あいつはベロベロに酔っ払って帰ってきて、たまたま君が花瓶代わりにしていたガラスコップの水を飲んでしまったんだから。
そのガラスコップには、鈴蘭(すずらん)の花が入っていたけれど、たまたま君が花を抜いたままその場を離れたすきに、喉が渇いたあいつが知らずに飲み干してしまった。
鈴蘭は綺麗な花だけど、毒を持っているからね。もちろん、君はそんな事は知らなかったんだから、警察にそう言えば良い。
僕の事を忘れられなかった君は、僕の事を想って鈴蘭を活けてくれていた。鈴蘭の花言葉は純粋。まさに、君の僕への愛が純粋だった事を証明している。
その証拠に、君は全く悲しんでいない。そうか、君はわかっていたんだね。あいつが僕を殺した事を。だから、復讐してくれたのか。そうか、そうだったのか……。
そうだよ、笑って良いんだ。君は見事に復讐を果たした。僕の恨みを晴らしてくれたんだ。ありがとう。
泣かないで。どうして泣くんだい? その写真は……。僕の写真、まだ持っていてくれたんだね。ありがとう。僕はいつまでも君の傍にいるからね。君が幸せになるまで、僕は君を見守っている。だからもう、泣かないで。君を心から愛しているよ。
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